お題『束の間の休息』
南の壁一面を舐め回すように黒い4つの点を探しては指で穴を開けての作業をして、ようやく3つめの穴を開け終えてしばらく経った頃、俺は束の間の休息を取っていた。
休憩を取っている場合ではない気がするが、目と指の疲れが半端ない。
「俺も歳だな(苦笑)」
なんて独り言を呟くと……
『20代前半の若者が何を言っとるんじゃバカもの!?』
「えっ?!な、何?誰!?」
部屋の辺りを見渡しても姿が見えない。
『あぁ、こっちこっち。お前さんが穴を開けた場所を覗いてみろ』
言われるがまま覗き込んだ。
すると隣の部屋が見えた。マネキンや石像が沢山置かれた部屋のようだ。
『そっちじゃない、ま〜っすぐを覗くんじゃよ』
声の主は俺が見てる場所がわかるらしい。
素直に従い覗くと、真実の口のオブジェがパクパク口を開け閉めしている。
『お前さん今の部屋から出たいだろう』
「もちろん」
『簡単じゃよ。部屋から出るには何がいるのか考えてごらん』
そう言って真実の口のオブジェは目を閉じて話さなくなった。
End
お題『力を込めて』
南十字星のような4つの点が紙切れ以外にも発見した。それは机が置かれた【南】側の壁だ。
白い点ではなく今度は黒の点が4つ描かれている。
俺は、4つの点を十字に指でなぞり中央にあたる部分を力を込めて押してみた。
ズボッ!?隣に穴が空いた。
壁をなぞっている時から見ためとは裏腹に違和感があった。壁をペンキや漆喰で塗っている感じとも違う、これは紙タイプだ。
それでも人差しだけで簡単に壁を突き抜けるほど、
俺は武道派のアニメキャラの真似事なんて出来ない、ただの凡人だ。モブキャラに近い存在だと俺は自負している。
では壁はどうして空いてしまったのか。
答えはまだわからない。現段階では穴は一つだ。
俺はまだ南の壁に先ほどと同じ黒い点がないか探して見ることにした。
見つけ次第指に力を込めてみようと思う。
End
お題『過ぎた日を想う』
よく親父に言われた言葉がある。
『過ぎた事(日)をいつまでもくよくよ想っても現実は(今)は何も変わらねぇ。だったら前(未来)に進しかなねぇんだよ!!』
それに対して俺は……
「親父に何が、わかる!?俺が……俺がどんなに悩んでいても、俺の話を聞こうとしないで何でも勝手にホイホイ決めやがって!!ウゼェんだよ!」
顔を合わせる度に親子喧嘩して家を飛び出した。
だけど当時の俺は中学生で大事な時期だった為、御袋がすぐに警察に連絡してしまい俺はものの数時間で、補導され家に戻された。
親父が軍人、御袋が警察官だと正直気が休まらなくてツラかったなぁと、知らない部屋にいながら過ぎた日を想うのだった。
End
お題『星座』
かばんの中にヒントが書かれた紙切れを発見した。
真っ黒に塗りつぶされて、中央に4つ白い点が描いてある。
指で点と点を結ぶと歪なひし型に見える。
下の点の位置が上の点と左右の点に比べて異常にさがって描いてある。
もしかして全ての点と点を繫げることが間違っているのだろうか。
かばんの内ポケットからもう一枚半透明の紙を発見した。
先ほどと同様な位置に白い点が描かれてその点の隣には「α(アルファ)、β(ベータ)、γ(ガンマ)、δ(デルタ)」と文字が書かれている。
これはギリシャ文字だ。意味がありそうだな。
とりあえず、2枚の紙を重ねるとピッタリと4つの点が重なった。
俺は思い出した。昔小学生の時遠足でプラネタリウムに訪れたこと。同じクラスで友達のあいつは、やたら宇宙や星座の事が詳しくて、俺に一生懸命教えてくれたっけ?(笑)
「南十字星っていう星座、日本ではあまり見えなんだよ。ボクさ、大人になったら絶対見に行くんだ!!」
あいつ今頃どうしてるだろう。
中学に上がる頃俺は私立へ入学したからあいつとは小学生以降一度も会っていない。
あぁ久しぶりに会いたくなった……。
End
お題『踊りませんか?』
「踊りませんかー♬踊りませんかー♪」
隣の部屋(【東】の壁)から再び声が聞こえて来た。
3時間以上前に「出せー!!」と叫んでいた奴が、
何を思ってか今度は
「踊りませんか〜♪うふっふぅ〜♪踊りませんか〜♪
と大音量で歌い出した。
しかもそのフレーズだけエンドレスに
頼むから静かにしてくれ。
俺は【南】の方角にある机に座り
かばんの中にあるヒントを探していた。
End