よつば666

Open App

お題『束の間の休息』

 南の壁一面を舐め回すように黒い4つの点を探しては指で穴を開けての作業をして、ようやく3つめの穴を開け終えてしばらく経った頃、俺は束の間の休息を取っていた。
休憩を取っている場合ではない気がするが、目と指の疲れが半端ない。

「俺も歳だな(苦笑)」

なんて独り言を呟くと……


『20代前半の若者が何を言っとるんじゃバカもの!?』

「えっ?!な、何?誰!?」

部屋の辺りを見渡しても姿が見えない。

『あぁ、こっちこっち。お前さんが穴を開けた場所を覗いてみろ』

言われるがまま覗き込んだ。
すると隣の部屋が見えた。マネキンや石像が沢山置かれた部屋のようだ。

『そっちじゃない、ま〜っすぐを覗くんじゃよ』

声の主は俺が見てる場所がわかるらしい。
素直に従い覗くと、真実の口のオブジェがパクパク口を開け閉めしている。

『お前さん今の部屋から出たいだろう』

「もちろん」

『簡単じゃよ。部屋から出るには何がいるのか考えてごらん』

そう言って真実の口のオブジェは目を閉じて話さなくなった。

End


10/9/2024, 5:29:02 AM