青梅の実を雨が濡らしていく
翅も重たし水月の
紫陽花の涙に囚われ
明日もきっと雨だろう
糸柳の葉を雨が濡らしていく
じっとりとした重い気の
ひんやりとした薄墨の
青梅の君の毒に死ぬ
明日もきっと雨だろう
梅雨(6/1お題)
煌めく青い夏も越えて
黒い燕も巣立つのに
あなたはまだ憂いている
これでよいのかと
バカみたいね
他人を大事にして何になるっていうの
なんにもわからないのなら
自分のやりたいようにやればいい
それでもあなたが憂うなら
その涙を運んであげるわ
幸福な王子様
バカみたいね
自分を大事にして何になるっていうの
他人が生きるのを真剣に楽しんでいるのなら
大切にしてあげればいい
道徳なんてどうでもよくても
自分がそうしてあげたいならば
大切にしてあげればいい
それでもあなたが憂いても
冬がこようと 傍にいるわ
幸福な王子様
バカみたい(3/22お題)
日毎死に往く未来を救う為に
夜毎誰かの見た夢を殺す
僅かな幸せだけ持って
ただ見守るだけでも
旅は続く
日毎生きる自分を救う為に
夜毎殺してくれと縋る夢を見る
希望や絶望は遥か彼方で
もう見えなくても
僅かな幸せだけの為に
終わらせられはしない
夢の庭には屍の山でも
終わりなき旅(5/31お題)
あの虹の御下へ往きたくて
右も左も分からぬままに落ちてきて
ヒトとして生きることはあまりにも難しく
幾つもの善きを重ねた階も
それが悪ではないとただ信じる他なく
どこまで昇ればよいのかと思う間は未だ泥沼
それでも生きろと
ただひたすらに上へ上へと
ああ
天獄へ往けることはまだ救いなのだろう
赦すしかないこの罪の燃え尽きるまで
灰の降りしきる丘であの虹が見えるのを待っている
善悪(4/26お題)
砂の上で大輪の花が
寄せては帰る波に洗われ
そっと微睡んでいる
向こうから聴こえる歌声に
心奪われて
少しずつその花開く
夜を閉じ込めた小瓶からは
懐かしい海の匂いがした