いつの間にかなくしてしまった
幼ごころの代わりに
なにが取って代わって
ここにおさまっているのだろう
なにをも疑うことを知らぬ
純真無垢な心
それは天へ通じるものともいう
どれだけ知識を得たとしても
どれだけ真実に近づけたとしても
あの子どもの頃の
純一無雑な瞳
あの濁りのない光を
ふたたび宿すことはできない
ああ あの日々よ
光に満ちた懐かしい日々よ
それでも
天への道は今 開かれている
今の自分を愛してこそ
過去の自分をも愛せるのだ
あの頃も 今も
同じひとつのたましいなのだから
#子供の頃は
全か無か
白か黒か
はっきり答えを出すことに
汲々とするのはもうよして
のんびりいこうではありませんか
正解のない問題に
正解する必要はないのです
日常を変えなくてはと
焦ったところでなんになりましょう
のんびりと ゆっくりと
代わり映えのない日常を
楽しもうじゃありませんか
この中途半端ではっきりとしない
ぬるくてグレーな場所に寝転んで
哲学してみてもよいのです
あなたの人生は
まだ長いのですから
#日常
雨に色はないけれど
雨のことを思い浮かべると
それは緑になり 青になり
滴り落ちる雫でさえ
清らかに彩られて
この胸を淡い色に濡らしてゆく
わたしにとっての雨は
灰色でもなく 黒でもない
どこまでも澄み透った色
悲しみに暮れ
苦しみに打ち沈み
生を憂う者にも
自然を流れる命はやさしい
いつも孤独な者のそばに寄り添い
希望の色を灯してくれる
#好きな色
おはよう
早いね
調子はどうだい
ご飯はたべたかい
天気はどうだろう
暑くなりそうかい
いやに風が強いね
雨降らないかな
きみが占ってよ
まだ顔は洗ってないって?
じゃあ雨は降らない
冗談だよ
晴れの日だっていつだって
きみは清潔にしてるよ
ああ、こんな会話
あとどれくらい続けられる?
ぼくはきみが来てから
神さまに感謝することだって
覚えられたんだ
きみと生きられる幸せに
感謝しますって
いつも祈ってる
いつもと変わらない一日を
今日もお与えください、って。
#あなたがいたから
五月雨の日曜日
傘の縁から見上げた空に
まだ羽ばたきのおぼつかぬ
ひばりが一羽おりました
じっと見つめていましたら
ふわりと地面にまろびつつ
かわいい足でトコトコと
歩く練習してました
雨に濡れて冷たくはないか
ここへ来て
ちょっと休憩していきなさい
わたしが何度すすめても
ひばりの子は歩みを止めません
丸いつぶらな目が言うのです
あんたと相合傘する暇があるのなら
もっとたくさん練習するんだ
早く一人前になるんだ
わたしも傘をそっとたたんで
ひばりの子の横に並び
一緒に濡れて歩きました
#相合傘