Sweet Rain

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9/10/2022, 10:28:09 AM

 「貴方からの愛情が、足りないの!!」

 ――そう激昂して、彼女は闇に消えた。


 僕は安堵した。

 湿った土が爪に詰まっていることも忘れて
 解放感が稲妻のように走り抜ける。

 生ぬるい夜風に揺れる木々。

 月は僕に顔を向けず、
 何も見ていないと言わんばかりに雲隠れしていた。



 喪失感などあろうものか。
 翌朝コーヒーを啜りながら会心の笑みを浮かべる。


 [――続いてのニュースです。]

 [山林にて、身元不明の女性と思われる――]



  2022/09/10【喪失感】

9/2/2022, 10:27:54 AM

 心にはどうやら
 体と別の《寿命》があるらしい。

 《寿命》は人それぞれで
 決して長持ちすることだけが幸せとは言えなくて
 いつも温かな火が灯っているとは限らない。

 いとも容易く消えてしまう火がある。
 たくましく燃え続ける炎もある。

 体の《寿命》とは違って
 心の魂は何度でも生死を繰り返す。

 誰かの心を殺し続けることは可能で
 誰かの心に小さな火を分け与えることも可能で

 くるりと裏を返せば

  ――火の用心。


   2022/09/02【心の灯火】

9/1/2022, 12:36:58 PM

 ――あれ、おかしいな。

 ふとLINEを開くと、一番上に《俺》とのトークが。


 誰か名前とアイコンを変えたのか?
 でも、俺と全く同じプロフにするなんて気色が悪い。

 さらに奇妙なことに、
 名前の下にある最後のトークの表示もない。

 吸い込まれるようにして《俺》の名前に指が伸びる――

 [《俺》が写真を送信しました]
 [《俺》が写真を送信しました]
 [《俺》が写真を送信しました]

 ピコピコと鳴り止まない無機質な通知音。

 指が震える。
 指先と電子画面、興味と恐怖の、あと数ミリの葛藤。

 ――ピコン。

 [《俺》が写真を送信しました]


  2022/09/01【開けないLINE】

8/31/2022, 2:34:24 PM

 足りない。

 僕の血肉と化す魂が、足りない。

 延々と満たされることのない欲望が
 枯渇した理性すらも喰い千切った。

 満腹の幸福感も忘れてしまった。

 味覚も消え失せ
 そこにあるのは濁り赤き肉塊。

 生きとし生けるもの
 その純なる輝きを血に染めた代償は

 いつも僕の手のひらに。


  2022/08/31【不完全な僕】