「貴方からの愛情が、足りないの!!」
――そう激昂して、彼女は闇に消えた。
僕は安堵した。
湿った土が爪に詰まっていることも忘れて
解放感が稲妻のように走り抜ける。
生ぬるい夜風に揺れる木々。
月は僕に顔を向けず、
何も見ていないと言わんばかりに雲隠れしていた。
喪失感などあろうものか。
翌朝コーヒーを啜りながら会心の笑みを浮かべる。
[――続いてのニュースです。]
[山林にて、身元不明の女性と思われる――]
2022/09/10【喪失感】
9/10/2022, 10:28:09 AM