ごめんねじゃなくてありがとう
そう言ってほしい
君は言った
君はいつだって正しい
ごめんねは良くないと思う
それはどこかで自分が許されることを願っているから
無責任で
稚拙で
最低な言葉だ
そうわかってるのに
なぜだろう
ありがとうが辛くなって
いつの間にかごめんねになってしまうのは
僕だけ貰っているような気がして
君に何もあげられない気がして
君から大切なものを奪っている気がして
ごめん…
僕は4文字にすら勝てない
剣の道を極めた
まっすぐな剣を愛した
曲がった人間
腐った人間
強欲な人間
自分とは違う人間
すべてを斬った
斬り果てた先に思い描く理想郷があると信じた
私は武勇と思想を称えられ、国の王になった
そして知った
自分の愚かさと罪を
曲げられた人間が支えていた人々
罪を背負う人間が支えていた綺麗事
欲に忠実な人間の努力
矛盾を愛すことができなかった
自分と逆の相手の立場に立てなかった
滅びゆく国を見下ろしながら
私は剣を首に突き立てた
眠れないほど自分を否定した
そんな事をしても無駄だと
過去の自分がささやく
黒い壁が迫る
もはや何も見えない
壁が胸を押し付ける
何も無いはずなのに
壁がある
あの時をやり直したい
この時をやり直したい
そんな事を考える一秒前をやり直したい
何もできない
無責任に弱さを自覚する
もしも今この瞬間を
やりなおさないような一秒を過ごせたら
光がさすのだろうか
この黒い壁の色を知れるのか
僕にできるだろうか
はっきりした青と緑
ぼやける遠いアスファルト
シワの多い手と
兄貴の手に繋がれながら
スキップの練習をして歩いた
反対側の公園の木になにかついていた
カブトムシだと思った
昆虫王者だと思った
嬉しくて仕方がなくて
二人の手をほどいて
はやる気持ちに心躍らせながら
ダッシュで向かった
二人が何かを叫んでた
カブトムシ羨ましいのかな
でもカブトムシが逃げちゃうから
後で聞くから
アスファルトの中央の境界線をまたいだ
キュイイイキキー
僕の左で白い車が轟音とともに止まった
シワの多い手と
兄貴の手で
思いっきり叩かれ
説教を聞きながら
二人に引きずられ
トボトボ家に帰った
白と黒は遠い
彼女は白
僕は黒
彼女は花が好き
僕は土が好き
彼女は読書が好き
僕はサッカーが好き
彼女は僕が好き
僕は彼女が好き
まるで神様が決めたみたいに
僕と彼女は遠い
もし僕が神様になったら
人間は全員灰色にする
つまらない世界かもしれない
それでも彼女といられるなら
僕は灰色になりたい