小学生の頃。駅前にホテルが建った。
ターミナルホテル
アーバンなビルディングでとってもスタイリッシュ!
都会的な外観がかっこいい。
なにより「ターミナルホテル」の響きが小学生の琴線に触れた。
ターミナルホテルでお誕生日会を開いてもらった友達は羨望の的だったし、ターミナルホテルで子供会のお食事会があった時は小躍りした。
中学生になった。
英語の先生が「ターミナルというのは終着駅という意味です。色々な駅前にターミナルを冠する建物がありますが、あれは終点でもないのに終着駅を自称してるんですよ。それに“末期”や“終末”の意味もあります」と笑った。
ショックだった。カルチャーショック以上のショックだった。私の中の「ターミナルホテル」のイメージはガラガラと崩れ落ちた。
アーバンでスタイリッシュなターミナルホテルが終着駅のホテルだったとは!
その日からターミナルホテルはなんとなく薄暗く、翳りを帯びていた。イメージは完全に終着駅シリーズ。
あれから数十年。
ターミナルホテルはますます薄暗くなっていき、目に見えて寂れていった。インバウンドで少し海外からの客が増えたように見えたが、それも一瞬のことだった。
今も駅前にそびえるその建物は「アパホテル」の看板を掲げている。
ターミナルホテルはホテルのターミナルだったんだなあ、と見上げる度に思う。
友への贈り物を求め30分電車に揺られる。
オンラインで見つけたとても彼女の好きそうな品である。
なんとまあ取り扱いがないとのことで別のものを買う。徒歩圏内で手に入る商品であった。
気を取り直して。せっかくここまで赴いたのだからお気に入りのカキ氷でも食べて帰ろうと店に行く。
ちょうど私の手前で満席となってしまった。
仕事まで時間がないので泣く泣く街を離れる。
巡り合わせの悪い日である。
何をやっても上手くいかない。
こんな日もあるさ。
明日はきっといい日さ。
友の笑顔が見られるだろう。
ケセラセラ
うだるように暑い夏の日だった。
どこまでも続きそうな青い空が見えていた。
私と祖母と大叔母と。ベッドの上の祖父。
まるでその日常がずっと続くみたいに3人で笑った。
そこはどこまでも平和で、いつまでも平和。
私はあの日、たしかに永遠の中にいた。
病室の窓からは永遠が見えた。
永遠に忘れられない私の永遠。
太ってるから相合傘なんかしたらはみ出ちゃうよ(笑)
どこまでも青い青い青い空に
吸い込まれるように落ちていきたい