最初からまちがっていたのかもな───、
あの日、きみが目を逸らして吐き捨てた言葉が未だに心臓に刺さって抜けてくれない。
紅葉が、色褪せていく冬に備えて色づきだす季節の外れ。
くるしい。
告白してきたのはそっちじゃないか。
放課後の教室で、胸の鼓動がきみに伝わるんじゃないかと思っていたときの感情を今でも俺は覚えている。
親友だった。
だからこそこの想いは知られてはいけないとこころの奥に封印していた。
でもきみがその想いにそっと触れて、優しく掬い上げてくれて。
想いが通じた秋。
ふたりで暖め合った冬。
ふたりで散っていく桜を見に行った春。
普通の恋愛とは違うことを再確認させられた夏。
最初からなかったことにしようと告げられた秋。
こんなことになるのなら、やっぱり親友のままがよかった、なんて思ってしまうんだ。
─秋恋─ #71
最近、感性が薄れてきているような気がする。
雨が降っても、ああ傘必要か、とか浅いことしか心に浮かべずに終わる。
それだからか、最近書いた小説よりも昔書いていた小説のほうが心に響くものがある。
むしろ昔の自分の文章にはっとさせられることだって少なくない。
書けない。
昔は自由だった。
自由に書きたいことだけを書いていた。
でも最近は、こうしたほうが一般的にはいいよね、だとか余計なことを考えて、結局内容が薄くなる。
忙しくなってひとりで考える時間がなくなったからなのか。
書きたいものがわからない。
書きたいものはあるのに、反応を考えて思考が複雑化して、書けなくなる。
何も考えずに好きに書けていた頃を思い出す。
あのときの感性を大事にしたい。
─大事にしたい─ #70
何気なく、なんとなく、過ごしていた時間。
いつしか心の奥底で育っていた、私の時間よ早く終わってくれ、という鈍くくすんだ感情。
息苦しい毎日の海底で、遠い遠い海の上からのそんな光に憧れていた。
はやく、はやく、私の時間よ止まれ。
そんな私の世界を百八十度変えた人がいた。
でも、人の感情に永遠はないんだ。
だから、だから。
今は、今だけは時間よ、止まれ。
─時間よ止まれ─ #69
ビルの屋上から見下ろした、眠らないネオンの街は、ぞっとするほど暗かった。
─夜景─ #68
きみをクレマチスの花で飾って、
咲き誇る赤いシクラメンの花畑から逃がさない。
クレマチスの花言葉………束縛
赤いシクラメンの花言葉…嫉妬
─花畑─ #67