蝶よ花よと育てるのってあまりにも無責任だと思う。
自分の子供の将来を本当に考えているなら、尚更だ。
かといって、全部否定するみたく暴力的に当たられるのも、
放棄するみたく冷たく育てられるのも、
ある程度の愛を注ぎ込まれるのも、
結局は満足しないんだろうなって。
なんて自分は我儘な親不孝者なんだろうと思った。
─蝶よ花よ─ #27
最初から決まりきっていた。
私たちは生まれては死んでいく。
誰しもが分かっている。
それでも人が死ぬと悲しむ。
正直、なんの意味があるのだろうか。
生まれては死んでいく。
何十年もたてば、もう何も残らない。
縋っては無情にも消えていく使い捨ての人生だ。
そんなものの何十分の一の一瞬を気にしたところでどうなる。
使い捨てだと最初から決まっている人生なら、
何十年後には何も残らない人生なら、
やりたいことやったもん勝ち。
─最初から決まってた─ #26
その太陽みたいな彼は、私にとって眩しすぎた。
無邪気な明るさは私の心を蝕んでいく。
お願いだから、こっちを照らさないで。
照らされる度に自分の汚いところが浮き彫りになる。
照らされる度に罪悪感が募る。
そんなふうに笑いかけてもらえるほど、
私はできた人間じゃない。
どうしてこっちを照らすの。
分かっているのに。
私はきみの隣にいていいほど綺麗な人間ではない。
分かっている。
もう来ないで。
きみの光を浴びていると、心が暖かくなって
溺れてしまいそうになるんだ。
お願いだから、もう来ないで。
─太陽─ #25
十二時の鐘と同時にきっと私は消える。
そう言った彼女の儚げな笑顔に、
どこかの童話みだいだ、と思った。
どうして、どうしてそんなことが分かるというの。
彼女の心臓の音が伝わってくる。
彼女はこうして今も生きていて、
それが一生続けばいいのにとか思ってしまった。
確かに未来に保証なんてないから、
今を大切に噛みしめた。
…ああ、これで何人目だ。
どうしてどうして。
僕と関わった人は皆この世界から消えていく。
彼女は違うと思ったのに。
美しい鐘の音と引き換えに
気づけば僕はまたひとりになった。
─鐘の音─ #24
きみとなら、つまらないことでも幸せを感じられたのに
─つまらないことでも─ #23