頑張って、努力して、ようやく花が咲いたとしても。
結局は枯れちゃうんだよ、みんなみんな。
花が咲いたことを喜んでも、やがて枯れて花びらが落ちてしまうことを考えて“今”を十分に楽しめない。
そうやって、せっかく咲かせた花を十分に楽しめないまま私達はやがて枯れて死んでいく。
─花咲いて─ #11
思い浮かべては消して。
書き換えたい過去はキリがなかった。
忘れたい過去は思い浮かぶのに、
もう一度体験したいと思えるような過去はなかった。
ああ、最初からなかったことにすればいいんじゃないか。
どうしてもそう思えて仕方がなかった。
けれどそれは不可能だって分かっているから。
未来、かな。行くなら。
そんな未来があるのかも分からないけれど。
十年後の私は、消し去りたい過去に負けないくらいの鮮やかな過去を作れましたか。
十年後の私は、前を向いて歩けていますか。
─もしもタイムマシーンがあったなら─ #10
その少女は小さい頃から、気味悪がられてきた。
感情が一切読み取れない無表情。
意思を見せることのない無関心。
そして、漆黒にも似た暗い瞳。
分からない。分からない。
私は何が欲しいんだろう。
なにもかもが分からない。
少女が心の中で叫ぶようにして欲しているのは、きっと愛情。
─今一番欲しいもの─ #9
名前は、親からの初めてのプレゼントだと言うけれど。
私は、その感覚がどうしても分からない。
キラキラネーム、嫌なことが連想される名前。世の中にはそうやって過去ばかり恨む人がどれくらいいるのだろうか。
そんな人たちはそんな名前を付けられたことを厭うけれど。
貰えるだけいいと思うんだ。
私なんか親の顔も知らない。
─私の名前─ #8
「なーんにも、できなかった」
少女は、屋上からの景色に、ぐぐっとからだを伸ばして欠伸をした。
「私の楽しい高校生活はどこ行ったの。これもあれも全部あんたのせいだからね」
その視線の先には、浮かんでは消える死神の姿があった。
─視線の先には─ #7