腰掛けた傍らにひとりがゴロン床で伸びをした
そばからふたりめがこてんと転がった
そうか、春だね
ママは過保護だからきみたちには
ちょっと狭いおうちかもしれないけれど
今日は気持ちいいから窓を開けて
ほら一緒に
「風を感じて」
ひとりまたひとりズラッと窓辺を取り合うななつの背中
きもちいいね〜
また明日も明後日も
来年も再来年も
ここから同じ景色を見て
同じ風を感じよう
ずっとずっと
そばにいてね
夢じゃない。
今日、きみがいない
6年と1ヶ月と8日
君がいた日々はいろとりどりの光を放ち
思い返せばあっという間だった
それはあまりに短すぎたように思う
きゅっと瞑るそのひとみのいとしさよ
どれほどの慈しみもたりないように感じる
もしこの先も時間があったとしても
届けられたかはわからないけれど
きっときみはじゅうぶんだと言ってくれるのでしょう
だから「もうおやすみ」私の言葉に
静かに瞳を閉じたのでしょう
今日、きみがいない
部屋はどこを見てもがらんと感じて
今までどう過ごしていたのかわからないよ
今日、きみだけがいない
おはようもごはんも
さみしいけれど
やっと苦しみから解放されたのね
今はお空でのびのびとすごしているかな
たくさんのありがとうをこれからもきみに
きみはこころにずっと
わたしのなまえ
1ねん2くみ 川ぶち さり
わたしのなまえはママがつけてくれました。
ママはわたしが生まれてすぐしんじゃいました。
わたしはママことをおぼえていないのでこのはなしはパパにききました。パパはママとけっこんしたときのしゃしんとそのまえのしゃしんをみせてくれました。
パパはわたしのなまえは「どんなときもつよくってきれいに花がさくみたいになってほしいきもち」だとおしえてくれました。
いまはママがいなくてさみしいけどパパが「さりのなまえはママがこころをこめてプレゼントしたかくされたてがみなんだよ」とおしえてくれたのでわたしはじぶんのなまえがすきです。なまえをよばれるとママもよんでくれてるきがします。
「隠された手紙」
そのぬくもりを
その笑顔も泣き顔も
すべて愛してる
大嫌いだとか
馬鹿だとか
君がそんな言葉投げつけてきたって
ずっと愛してる
君がいつまでもたくさんの幸せに包まれますように
そばに悲しみを分かち合える誰かが居ますように
わたしはそう願うのです
まだ会ったこともないあなただけど
大切なたいせつな
わたしの
「まだ知らない君」
恐怖が私の焦燥感を掻き立てる
手放しでお茶を飲むこともできずに
なんとか平静を保つために埃の一つも見当たらない床を掃いて艶やかなテーブルを磨く
今日こそ鳴るだろうか
遠方の地は影だけが張り付いて残るような光と闇の交叉があったらしい
彼の人を見送ったあの日から永遠とも思えるながいながい時がたつ
絶対に帰ってくる。
私は今日も待ち続ける
彼の人の帰宅を知らせるであろう戸口の鐘の音を。