好きじゃないのに
むしろ苦手だった。
人のことを見透かしてるみたいに余裕な態度で、どんな嫌がらせや嫌味にも涼しい顔して躱す。
極力関わらないようにしようと思っていたけど、気持ちとは裏腹に目で追ってしまう。
友達に「好きなの?」と聞かれてわたしは全力で「好きじゃない!」と否定した。
わたしはただ、あいつがボロを出すところを見たいだけ、あいつの悔しがる顔が、あいつの負けた姿が、あいつの余裕が無くなる所が見たいだけ。
断じて好きじゃない。
好きじゃないのに、なんか、気持ちがモヤモヤする。
わたしはどうしても、あいつから目が離せない。
その気持ちが「好き」だということに気づくまであと少し。
ところにより雨
君は晴れ女。僕は雨男。
君の周りはいつも晴れていて温かい。
僕の周りはいつも雨。
君はいう「晴れは好きだけど、ずっと晴れてると逆に気が滅入ることがある。たまには雨が降って欲しい。」って。
君は僕を必要としてくれる。
だから、僕は君に雨を届けるために君の元に現れる。
僕もいつも雨でどんよりして気分が落ち込むから、たまには明るくて温かい晴れの日が欲しい。
僕にも君が必要だよ。
特別な存在
お互い知り合ったのは、この世界の地獄のような、掃き溜めのようなところ。似た境遇で親近感が湧いて面白半分で一緒に居た。
お前のことを知る度にもっと興味が湧いた。
なんでも知りたくなって、なんでも話したくて、お前になら俺の全部をさらけ出せた。
愛よりももっと深いナニか。
俺にとってお前は唯一無二、特別な存在だった。
お前がいなくなった今、俺はこれからどうい生きていけばいい?
どっちに行けばいいか、どうしたらいい、わからないんだ。
お前という特別な存在は俺にとって人生の指針で生きる糧だったんだ。
バカみたい
酒を飲むと頭が正気じゃなくなって何も考えなくて済むから、この仕事は天職だと思った。
でも実際そこは地獄でしかなかった。
売上のことしか頭にないマネージャー。
男のくせに女々しく嫉妬や嫌がらせをして蹴落そうとしてくる同僚。
メンタルが不安定で狂った客たち。
家に帰って次第に酒が抜けると、頭がはっきりしてきて考えが巡る。
「はぁ…。バカみたいだな。ははは。」
醒めたばかりなのに、冷蔵庫から酒を取り出して俺はまた現実逃避する。
バカみたいだけど、バカでいれば楽な世の中だから。
二人ぼっち
みんなと一緒に居るけど、心は誰とも繋がっていない。
みんなでワイワイして楽しそうに見えるけど、空気を読んで楽しそうにしてるだけ。
裏ではお互いに見下してるのを知ってる。
私は一人ぼっち。
***
一人でいるのは少し寂しい、けど群れて歩くのもなんだかみっともなくて。
誰かと親しくなろうとするけど、心の内は分かり合えない。
中途半端な気持ちのまま、人付き合いを続けている。
僕は一人ぼっちだ。
***
「あの、隣、空いてますか?」
「あ、はい。どうぞ。」
ひと席分開けて、隣に座る。
一人ぼっちと一人ぼっち。
そこに会話がなくても、なぜか居心地がよかった。