待ってて
(※2/11「この場所で」、2/12「伝えたい」の前日譚)
7年前──
中学校の卒業式後、学校近くの小さな公園にて。
「好きです。…わたしと付き合ってください。」
少し間が空いて返ってきた返事は意外な言葉だった。
「俺も同じ気持ちです。…けど、すぐに付き合うことはできない。」
同じ気持ちだった喜びと付き合えないという言葉の意味に理解が追いつかず無言になる。
「先に夢を叶えてから、俺は必ず君を迎えに来る。だから待ってて欲しい。君のことを絶対に幸せにする。約束。絶対に約束を破らないから。…7年後の今日、この場所でまた会おう。」
真っ直ぐに見つめてくるその目を見て、本気なのが充分に伝わった。だから、
「7年後……。わかった。待ってるよ。」
目に涙を浮かべながらも心配かけないように笑顔で送り出した。
伝えたい
(※2/11「この場所で」の別視点のお話。)
告白されたのは7年前の今日。
でも俺は返事できなかった。
俺も同じ気持ちだったのに、自分の将来を、夢を優先させてしまった。
きっともう良いひとができて、俺のことなんか覚えてないだろうな、そんなことを考えながら約束の場所に向かうと彼女は居た。
ひとりブランコに揺れる後ろ姿。
絶対に間違いない。
声をかける寸前で彼女は振り向いた。
可愛らしかった彼女がとても綺麗になっていた。
駆け出して抱きしめたい気持ちを抑えて冷静に振る舞う。
彼女もどこか少しぎこちなかった。
仏頂面をしていたかと思うと急に僕に抱きついてきて思わず俺も感情をぶつけるように彼女をギュッと抱きしめた。
この7年間、忘れることはなかった。
きっと彼女に相手がいても俺は潔く諦めるつもりだった。けど、彼女は俺とのこんなめちゃくちゃな約束を守ってくれた。
(「ありがとう。好きだ。愛してる。もう絶対に離したくない。」)
気持ちが溢れすぎておかしくなりそうだ。
早く伝えてたい。
「俺も貴女が好きです。愛してます。俺の恋人になってください。」
ずっとずっとずっと伝えたかった言葉。
彼女は何度も何度も頷いてくれた。
愛おしくてたまらなくて、俺はもっと強く彼女を抱きしめた。
この場所で
中学生の頃、約束した。
「7年後の今日、この場所でまた会おう。」と。
15歳だった私ももう22歳。
あの頃とはだいぶ変わってしまっただろうか?
来るか来ないかわからない不安でいっぱい。
気を紛らわそうと私はブランコに揺られていた。
ザッザッと背後から誰かが近づく音がして咄嗟に振り向くと、約束通り彼は来てくれた。
中学の頃よりもだいぶ背が伸びて、面影はあるが顔つきも大人っぽくなって余計にドキドキする。
「…ひっ久しぶり。」
「ん。お久しぶり。…見ない間にすごく綺麗になったね。約束、守ってくれてありがとう。」
「来ないんじゃないかと思った〜…そっちこそ、こんな小さかったのに大きくなっちゃって。」
再会できて死ぬほど嬉しいのに、この気持ちをどうすれば良いかわからなくて、ぶっきらぼうな態度になる。
彼はあの頃と変わらない笑顔で真っ直ぐ私を見つめてくれる。
どうしようもなくて、泣きそうで、嬉しくて、行き場のない感情をぶつけるように彼に思い切り抱きつくと彼はしっかり私を抱きしめ返してくれた。
「…俺の身勝手な都合で長い間、待たせてごめん。今日この場所に来るのが待ち遠しくて仕方なかった。あの時の返事をさせて欲しいです。」
半泣きの崩れた顔のまま彼の言葉に耳を傾ける。
「俺も貴女が好きです。愛してます。俺の恋人になってください。」
ずっとずっとずっと聞きたかった言葉。
堰き止められない大粒の涙がぼたぼたこぼれ落ちていく。声も出せなくて私はただ彼の返事に何度も何度も頷いた。
誰もがみんな
他人を表面だけで推し量ることはできない。
誰にでもそれぞれの過去、それぞれの人生がある。
SNSを見ていると、その人の事実を見聞きもせず好き放題言う化け物が蔓延っている。
けれど、そんな化け物は無視していれば、見なければいないのと一緒だ。
せめて自分は自分だけは、実際に自分の肌で感じて、目で見て、耳で聞いて、頭で考えて答えを出したい。
誰もがみんな過去を持ってる。
誰もがみんな生きている。
花束
それは、あなたへの想いがたくさん詰まった物。
1本は出会えた喜び。
1本は好きな気持ち。
1本は愛する気持ち。
1本は感謝の気持ち。
花1本、1本にそれぞれ気持ちが籠ってる。
花束の重みは人の想い。