夢を見てたい
毎日罵声を浴びせてくる上司。
私の事を引き立て役にしか見てない友達。
平気で浮気して反省しない彼氏。
仕事の責任を全部私に押し付ける同期。
帰っても誰も居ない暗い部屋。
こんな現実なら永遠に夢を見ていたい。
だって、夢の中なら
私をすごく可愛がってくれる上司がいて。
対等でどんな事も笑い合える最高の友達がいて。
一途に私の事を想ってくれる素敵な彼氏がいて。
一緒に切磋琢磨できる頼もしい同期がいて。
オシャレで明るくて暖かい部屋がある。
永遠に夢を見るにはどうしたらいい?
だれか、教えてよ。
その手紙にはところどころ涙で滲んだような跡が残っていた。
20代女性、一人暮らし、自死。
彼女は永遠の夢を手に入れられたのだろうか?
いや、夢は結局夢でしかない。
ずっとこのまま
人間の一生なんて大したことない。
人生の中でドラマのような出来事が起きて人生が劇的に変わるなんてことは、ほんのひと握りの人にしか訪れない。
でも、それでいい。
僕は今の僕の人生が楽しいから。
ドラマチックなことなんか起きなくていい、ずっとこのまま平凡に生きて平凡に死を迎えたい。
そう、思ってたのに。
突然、僕の住むアパートの前に不釣り合いなリムジンが止まった。
「探しましたよ、坊ちゃん。さ、急ぎ屋敷に戻りましょう。今、お屋敷は大変なことになっております!詳しくは車内で。さ、早く!」
おいおい嘘だろ。こんなの、望んでない。
寒さが身に染みて
手足や鼻先が冷えて真っ赤になる。
帰りのバスはまだ来ない。
自習してたらいつの間にか外は真っ暗で誰もいない。少し怖いのと芯から冷える寒さでぎゅっと体を縮こめた。
「あの…大丈夫?」
突然背後から声をかけられてビクッとなった。
私の他にも居残りしていた人がいた。
「あっ、えっと、寒くてうずくまってました。」
「寒いですよね、あ!良かったらコレ。…僕もバス待ちで、寒いかなと思って買っておいたんです。」
持つとまだ熱いくらいのココア缶を手渡された。
「え、でもこれあなたのじゃ?」
「僕のだから僕の意思で君にあげました。今日は芯から冷えるから、これ飲んで温まってください。あと、嫌じゃなかったら横にいてもいいですか?…僕、暗いの怖くて…お恥ずかしい。」
彼は少し恥ずかしそうに首筋を軽く掻きながら笑った。
寒さと彼の優しさが身に染みたある冬の夜のできごと。
20歳
あまり乗り気じゃないまま参加した成人式で、1人の人のスピーチが印象に残った。
『新成人の皆様、この度はおめでとうございます。……この"おめでとう"にはどんな意味が込められているか分かりますか?
皆さんが産声を上げてから20年。この20年を無事に生きてこられたことへの称賛の意味が込められているのではないでしょうか?
考えてみてください、20年、様々捉え方はありますが、決して短い時間ではないはず。病気や事故で20年を迎えられない人もこの世には沢山います。今、当たり前のように過ごしている日常は誰かにとっては過ごすことができなかった非日常です。
そして、新成人という新しい立場。
今までは親御さんが背負ってくれていた"責任"を自分で背負わなければなりません。
この日常に感謝して、これからは自分の人生の責任は全て自分で背負う。そのことをしっかり自覚して、新しい人生の歩みを進めてください。
最後になります…
シャキッとしろ!背筋を伸ばせ!甘ったれるな!社会に出たら誰も助けない、自分で自分を守る力をつけろ! …以上です。ご清聴ありがとうございました。』
会場がシーンと静まり返った。
僕は思わず、拍手してしまった。
三日月
『月満ちれば則ち虧(か)く』
月の満ち欠けと同じく、満月が最高潮の時だとしたら、徐々に欠けて衰えていくことを覚悟していなければいけない。
夜空を見上げると三日月。
これから満月を迎えて、また欠けてゆく。
確かに、月の満ち欠けと人生は似ている。
新月のように真っ暗で何も見えなくなってもきっとまた満月はやってくる。