三日月
『月満ちれば則ち虧(か)く』
月の満ち欠けと同じく、満月が最高潮の時だとしたら、徐々に欠けて衰えていくことを覚悟していなければいけない。
夜空を見上げると三日月。
これから満月を迎えて、また欠けてゆく。
確かに、月の満ち欠けと人生は似ている。
新月のように真っ暗で何も見えなくなってもきっとまた満月はやってくる。
色とりどり
色鉛筆の色しか知らなかったし興味がなかった。
そんな俺は幼少期に体験でやった版画にハマり、版画の職人になるため美大に進んだ。
美大には本当に色々な奴がいて、
そんな中で出会った友人は日本画専攻で、やけに色にこだわりがあるやつだった。
「お前ってさ、版画やってるじゃん?色って何色ぐらい知ってる?」
「あぁ。色?まぁ、せいぜい12色ぐらいだな。色鉛筆の。」
「はぁ〜お前ってやつは…。」
あからさまに呆れたポーズを取ってきた。
「色なんかそんなに知って何になんだよ?」
「この世にある色ってのは光の加減だったり組み合わせによって正確な数にできない程あるんだよ。それってさ、凄い…ロマンチックじゃね?」
「別に。」
「くそーなんで色の良さが分からん!!」
年甲斐もなく地団駄を踏む友達を見て思わず吹き出す。
色オタクでウザイけど、色んな色を駆使して凄い絵を描いてるとこは嫌いじゃないんだよな。
雪
雪は私たち人間に似ている。
空から降り注いで積もった雪は純真無垢で汚れひとつない。
産まれたての赤ん坊も純真無垢で穢れのない存在。
積もった雪は人々が踏んで、徐々に泥と混じって汚れていく。
人間も成長とともに、色んな人間との関わりで純真無垢なままではいられなくなる。
気づくと春を迎えて雪は溶けて跡形もなくなる。
人間もあっという間に死を迎え跡形もなくなる。
君と一緒に
私はひとりで行動するのが好き、ひとりでカフェに行ったり、ひとりで美術館に行ったり、ひとりでゆっくり過ごす。
誰かと一緒に行動することは滅多になかった。
君はそんな私を理解して心地いい距離感で接してくれた。
ある日、ひとりで植物園に行ったら、とても綺麗な花を見つけた。
その時ふと、君にも見せたい、君と一緒に来たいと思った。
今までひとりで出掛けた時、誰かを思い出すことなんてなかったのに、最近はよく君の顔が浮かぶ。
なんだか、君のことが知りたくなった。
今度は、君と一緒に出かけてみようかな。
冬晴れ
僕の住むところは灰色に覆われた仄暗い世界、空がいつも雪雲で覆われていた。
酷い寒さで、外に出ると肌が張り裂けそうなくらい痛いから僕たちは地下で暮らしていた。
ある日、『ゴーン、ゴーン、ゴーン』地下街の鐘が3回鳴った。
滅多にない冬晴れの合図だった。
この合図があると僕たちは外に出ることができた。
数年に1回しかなくて、この時、僕は生まれて初めての冬晴れだった。
母に手を引かれてゆっくり外に出ると、あまりの眩しさに目が眩んで倒れそうになった。
父に抱えられた僕は、まだチカチカする目を凝らして辺りを見渡した。
地面は一面真っ白だけど、空は雲ひとつなくて、絵の具で隅から隅まで塗りつぶしたような淀みのない綺麗な青い空を見た。
一生忘れられない景色。
また見たい。
次の冬晴れの時まで生きていられるといいな。