「まだ知らない世界」
目の前に扉が現れた。
戸惑い、扉の前で立ち止まっていると、扉が少し開いて導かれる。
未知の世界への恐怖心と好奇心がせめぎ合う。
躊躇いながらも、扉に手を伸ばす。
とても怖い。この先に何が待ち受けているのか、どんな結果になるのか、予測不可能。
それでも私たちは、扉を開く。
予測不可能だからこそ、まだ知らない世界へ飛び込む勇気と覚悟を持って。
「手放す勇気」
現代社会はモノで溢れている。
様々な文明の利器によって生活が豊かになったのはわかるが、あまりにもモノが溢れすぎていると思う。
特にスマートフォンは1度持ってしまうと手放すことはかなり難しいだろう。
そんな時、わたしはスマートフォンの電源を消して鍵のかかる箱にしまってみる。
現実逃避ならぬスマホ逃避だ。
スマホから離れると、辺りの景色が鮮明に見えた。様々な音がはっきりと聞こえる。
思考が巡る。言葉が紡げる。心にゆとりができる。不思議と気分が良かった。
完全には手放せなかったけれど、手放した少しの間、確かにわたしはいつもより人間らしかった。
「光輝け、暗闇で」
僕の片目は生まれつき視力を失っていた。
残りの片目も、次第に視力が失われていった。
そんな日々の中、僕はバレエと出会う。
毎日のレッスンのお陰で、舞台に立てるほど上達した。
きっと、僕の両目はもう少しで見えなくなるだろう。
暗闇の世界へ行くのはまだ少し怖いけれど、僕は輝かしい光に照らされて舞台の上で舞い続ける。
そんな僕の輝きが誰かに届くことを願って。
「酸素」
もしもこの世界から酸素が消えてしまったらどうする?
私は命よりも大切なあなたを、1分でも長く生かせるために身体中の酸素を全部あなたにあげる。
どうせ2人とも死ぬのに?
そんなのわかってる。でも、私は最期にあなたの役に立って、酸素がなくなる苦しみの中、あなたに看取られて逝きたい。
彼は口づけをするように優しく私の口から酸素を吸い取った。
「記憶の海」
誰にでも、思い出したくない記憶はあるだろう。
わたしの記憶は海のように果てしなく膨大だ。
ふとした瞬間、高波のように思い出したくもない嫌な記憶が押し寄せる。
わたしの気持ちとは裏腹に、わたしの中の記憶の海は否応なく思い出させる。
海の奥底に沈めてやりたい。
けれど、忘れたい記憶はどんなに沈めても沈めても、忘れた頃に浮かび上がってくる。
いっそのこと、記憶の海を消してしまおうか。
わたしは壁に頭を叩きつけた。
すると、額が少し切れて海水が流れ出た。