27(ツナ)

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5/5/2025, 12:59:35 PM

「手紙を開くと」

下駄箱を開けると、中に手紙が入っていた。
まさか!と思い辺りに誰もいないことを確認して素早く手紙をカバンにしまう。

いつもより倍の勢いで自転車を漕ぎ、ダッシュで部屋へ。心を落ち着かせて手紙を開く。

「お手紙、突然ごめんなさい!!!先輩の
れんらく先をど〜しても聞きたくて、
だめだったら大丈夫なんですけど…どうか!
よろしくお願いしますっ
♡」

中をみて、俺の高揚感は一気に消え去り、手紙をバラバラに破り捨てた。
こんなイタズラを仕掛けるやつはアイツしかいない。

5/5/2025, 8:01:23 AM

「すれ違う瞳」

美術館へ行くのが僕の趣味だ。
日頃の喧騒から離れ、静かで落ち着いた空間で、様々な芸術作品に触れる。
心が穏やかになりとても落ち着いた。

足繁く通うと、学芸員の方とも親しくなっていく。年配の方が多いなか、珍しく彼女は僕と同年代くらいだった。

僕から話しかけることはなかったが、端正な顔立ちと凛とした綺麗な立ち姿が印象的だった。

ある日、作品を鑑賞していると僕の隣に彼女がやってきた。
「こんにちは。いつも来てくださってますよね。…この作品私のお気に入りなんです。」
まさか彼女の方から話しかけてくれるなんて。
「あ、こ。こんにちは。僕も、この作品に惹かれちゃって。」
「私もあなたみたいに、両方の瞳でこの作品をちゃんと見てみたかったです。」
「…え。」
彼女の方を見ると、僕の方を見ているようで片目の目線があっていなかった。
彼女の片目は義眼だったのだ。
「…僕がこんなこと言うのもおかしいんですけど。芸術作品って目で見るだけじゃないと思うんです。見て楽しむもよし、香りや空気感、ものによっては触った感覚。五感全てで楽しめると思ってます。はっきり見えなかったとしても、この作品を素敵だと感じれただけで十分ですよ。」
そう言うと、無表情だった彼女は泣きそうな顔で笑った。

5/3/2025, 11:47:00 AM

「青い青い」

高校に入学して半年が経った。
生まれて初めて、好きな人ができた。
友達に誘われて入った卓球部で出会った。
真面目で寡黙な彼のことを私はいつの間にか目で追っていた。

駅までは帰る方角が同じだったから、勇気を振り絞って「一緒に帰ろう」って誘ってみた。
彼は少し驚いた様子だったけど「いいよ」と私に微笑んだ。

夏が近づき、夕方になっても空はまだ青々としていた。
彼は自転車通学だったけど、徒歩通学の私に合わせて自転車を押して同じ歩幅で歩いてくれた。
そんなちょっとした気遣いに私の心は舞い上がった。

気持ちを伝えるのは怖くてできなくて、友達以上恋人未満の曖昧な関係だけど、2人きりで色んな話ができるだけで、ものすごく幸せを感じた。

これは私の青い青い青春の1ページ。

5/2/2025, 11:18:42 AM

「sweet memories」

誰かを好きになって、告白して気持ちを伝える。
そんな当たり前のことを羨ましいと思う。

学生の頃、私には気になっている人がいた。
1人で静かに読書をしている姿を見ていると、なぜだか頬が暑くなり心が騒がしくなった。

3年間想いを寄せながらも、かなり奥手だった私は話しかけることすらできなかった。
それでも彼を想った3年間は今となっては良い思い出だった。

私にとっての「bittersweet memories」(甘酸っぱい思い出) だ。

5/1/2025, 12:04:55 PM

「風と」

風と貴方。
私は風が強い日が嫌いだった。
服は乱れるし髪もぐちゃぐちゃ。
貴方が植物園へデートに誘ってくれた日、最悪なことに風の強い日だった。

あまりの風の強さに園内のカフェに避難することに。すると貴方は「ちょっと待ってて」と強風の中、外へ出た。
少しして戻ってきた貴方は身体中に花びらをくっつけていた。
「どうしたの!?」と聞くと、満面の笑みで
「風が俺をメイクアップしてくれた!君も外に出てメイクしてもらおう。」
なんて言い出した。

そんな貴方がなんかもう可笑しくて、私も小さな子供のように強風の中外に出てはしゃいだ。
どんなこともポジティブに変換できる貴方は、風のように颯爽と私に変化をもたらしてくれる。

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