「春風とともに」
窓に叩きつけるほどの風が吹く。
窓を開けてみると、暖かな春風。風の強さに一瞬目を閉じて、目を開けた次の瞬間。
どこからともなく春風とともに桜によく似た梅の花びらが2、3枚部屋の中へ舞い込んできた。
そろそろ桜も咲く季節になってくるんだなと、これからの春の訪れに自然と頬が緩んだ。
「涙」
1年、思いを寄せていた人にフラれた。
告白したら。「そんなつもりなかった。ごめん。」と、私は彼にとって友達でしかなかったらしい。
フラれた時あまりの衝撃で涙なんて出なかった。ただ寂しくて、学生時代からの親友にダメ元で連絡すると、直ぐに明日会おうと返事が来た。
「今日はありがとう…。99%いけると思ったけどダメだった。」
「そっか。」
「てか突然連絡したのに、なんで予定空けてくれたの?」
「え?そんなの当たり前じゃん。何よりもあんたが大切だから。嫌いだったりどうでも良かったら時間作って会わないでしょ。……って、ちょっと!大丈夫??」
なんて事ない台詞だったけど、親友のその言葉を聞いて決壊したように涙がぶわっと溢れだした。
そして、本当に私の好きな人がわかった。
「小さな幸せ」
"幸せ" の定義は人それぞれで大きさも人それぞれだと思う。
ただ、幸せを享受しすぎると周りに沢山ある小さな幸せを見落としてしまうだろう。
「信号が全部青だった。」
「買い物のお釣りがゾロ目だった。」
「今日も一日楽しく過ごせた。」
日常の沢山の小さな幸せを見つけられる、そんな人こそ真に幸せな人だと思う。
「春爛漫」
幼い頃、両親は私をよく遊びに連れていってくれる人だった。
辺りが桜色に染まった春爛漫の公園にはよく連れて行ってもらった。
父は公園に行くと、いつも私にソフトクリームを買い与えた。見かねた母は「太るからやめて」といつも困っていた。
私はその様子がとても微笑ましかった。
そんな私も20歳の誕生日を迎え、お酒が飲める歳になった。
相変わらず、桜が咲くと公園に行っていた。
昔と変わったことは、私の手にある物がソフトクリームからお酒に変わり、昼間の桜から神秘的な夜桜に変わったことくらいだ。
だが、これが大人の贅沢な春爛漫の楽しみ方。
「七色」
ブラック企業に務めてはや3年…
さすがにもう色々と限界が来て、有給を使って1週間程、実家に帰ることにした。
あまりにもやつれた俺の様子に両親は言葉を失った。
久しぶりに自室に行くと、綺麗に掃除がされ昔のままで保管されていた。
何気なく机の引出しを開けると、1冊のスケッチブックがでてきた。だいぶ昔、俺がまだ保育園児の時に使っていたものだった。
パラパラと中をめくって見ていると用紙いっぱいに塗られた七色が目に入った。
赤、橙色、黄、緑、水色、青、紫。
その絵を見た瞬間、自分の中で何かが切れた。
小さい頃は雨上がりの虹のようにただ純粋に、色んな色になれる明るい未来に目を輝かせていたな。
俺は無意識に会社に電話をかけていた。
「仕事、辞めさせてもらいます。今までお世話になりました。」
もう一度、七色の未来を信じてみようかな。