あなたが私にくれた最後の言葉を
未だに見れずにいる
見なければ、いなくなってないって、
思えるから
通知の先にあなたが今も生きているって
思い込めるから
人間は最初に声を忘れていくらしい
わたしは、最後の言葉はあなたの声で直に
聞きたかったし、覚えていたかった
損なった自尊心と乏しい能力
灰色の世界で見つけた光
たった一つの極光に焦がれて
手を伸ばして、背伸びした末路
人生の全て、私の何もかもを犠牲にして
身を焼いて、魂を砕いて
漸く、眩い光を地上に落としたのです。
安いアパートの窓を
雨が強く叩いている
隙間から入り込んだ雨の匂いが
嫌な言葉だけが飛び交った部屋に
拡散していく
言葉が上手く口から出ずに、
喉の真ん中でぐるぐるしている
痺れを切らして出ていく貴方
乱暴に閉まったドアの衝撃で
棚が揺れる
音を立てて割れた香水の瓶
貴方に選んで貰った大好きな匂い
雨の匂いは、もうしない
筆をとって、色をのせる
小さなカンヴァスの上
落とした色のなんと艶やかなこと
描いた風景は貴方と見たかった場所
彩った思いは貴方に伝えたかった事
絵の中にいる貴方は私の憧れ
焦がれ続けて、届かなかった
この世に二つとない一条の光だったのです
特別な日じゃないのに、
会いに来てくれてありがとう
綺麗なお花と美味しそうなお菓子
とっても嬉しい
どうか、泣かないで
わたしには、どうしようもできないの
あなたの隣にいるのに、
なにもしてあげられない
泣かないで、泣かないで。
大切なあなた。