多分ずっと昔から
私たちには翼があるけど
それに気づいていない
それどころか抱える荷物は増えていき
体は重く、頭は硬くなるばかりだ
ただ夜でも雲が見える日があるように
いっぱい背負っていても
飛べる日があるのかもしれないし
背負ってきたものが
新たな翼となっているのかもしれない
飛べない翼
本気なら 飛んで来いよ ほととぎす
秋晴れ
スニーカーが汚れている。
はぁ、とため息を吐きながら汚れを払う。
溝に入った砂は擦るほど広がり
元のままの方が良かったのではと
また、ため息をつく。
忙しくなるとどうも机の周りや
冷蔵庫の中身、身の回りのものが
地味に荒れ始める。
鞄をかけ、洗濯機に洋服を投げかけ
スマホを布団の上にぽいっとして
久々に窓を開けると、少し空気が冷たくて
昼間に家に溜まっていたであろう重い空気が
少しずつ軽くなっていき気持ちよかった。
今日は寝る前に5分だけでもいいから
買ったまま読んでいなかった本を読もう。
装丁が素敵で思わず手に取ったら
紙の触り心地がさらっとしてて気持ち良い
そんな本を買っていたのだ。
特に誰かに話すこともない
秋の一ページ目
紙の開く音、指の触れる感覚に
私は毎年恋をする。
秋恋
いつか来たことがある。
それは夢のようだった気もするし、
君と繋いだ手の感触や、
優しい風の匂いを覚えているから、
たぶん現実だったのだと思う。
髪が風になびいて眩しそうな顔をする君を見て
愛おしいと思った。
なに?と優しく聞き返す君に
なんでもないよ。と答える。
ただそんな風景には少しにつかない
メロディーが僕の頭の中に鳴り続ける。
ヴィヴァルディ
チェロ・ソナタ第5番アレグロ
僕は現実を夢に変えて
君との未来を放棄した。
君と話したことはほとんど忘れてしまったのに
素早いメロディーと生温い風が
今でも時々僕の耳に吹き付ける。
花畑
ただただ流れていく
捕まえたくても捉えきれず
日々ノあれこれに追われて
誰のせいでもなく
どこか通り過ぎていく
心にほんの少しのもやもやを残して
ただちょっと頑張って
声をあげると
小さな声が集まり
ちょっとした勇気となり
時の流れに小さな淀みができる
そしてちょっとだけ未来が変わる
そんな気がしたんだ
夜明け前