通りすがりの5歳児

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5/6/2023, 1:28:46 PM


明日世界がなくなるとしたら、何を願おう。

明日も早いからもう寝ようと電気を消し、布団で横になった時ふとそんな事を思った。

いつも通りに過ごすのは勿体ない気がするから貯金全部を使って豪華な料理を食べて、ずっと行ってみたかった場所に旅行するのもいいかもな…それとも…

なんて考えていたら部屋のドアが開かれカチッと電気が付けられたかと思うと、同居人がSwitchの充電器どこ!?と慌てた様子で聞いてきた。

どうやらSwitchの充電が危ういらしい

たしか…その棚の下から2番目あたりにある、そう伝えると同居人はおっけ!なんて言いながら棚の中を探し始めた。
お前自分のSwitchの充電器どうしたんだよ?と布団に横になったまま聞くと
何故かボックスの中にちゃんと仕舞っておいたのに無くなったと言っているがどうせ此奴の事だ、ボックスの中がゴチャゴチャで見つけられないだけだろ…と思った。

この同居人料理は得意だが整理整頓は下手くそだし見つけるのも下手くそでこの間も目の前に置いてあるのに俺のイヤホン無くなった!なんて騒いでいた。

「ちゃんと仕舞ったなら無くならないだろ、よく見ろよ」とため息混じりに呟いたら無事俺のSwitchの充電器を見つけた同居人が充電器をコンセントに挿しながら
「不思議だよな〜完全に神隠しだわ」なんて意味のわからんこを言いながら俺の部屋でゲームの続きを始めた。

「お前充電器見つけたんなら自分の部屋戻ってやれよ」
そう言うと同居人は
「え〜?部屋戻るの面倒くせぇ、良いじゃん静かにやるから!」なんて言い出した
良くない俺はお前と違って明日早いんだ、なんて言っても此奴は聞かないだろう。
仕方が無いので静かにやらなかったら即追い出すし充電器も貸さないからな!と釘を刺して同居人が付けた電気を消し、小さく聞こえてくるゲーム音を聞きながら俺は眠りについた。


━━━明日世界が無くなるとしたら、なんて考えはいつの間にか消えて無くなっていた━━━

5/5/2023, 3:29:19 PM


君と出逢ってから


2歳年下の親友と思っていた彼奴に告白された


俺は混乱して何も言えなかった


彼奴は震えた声を誤魔化すように息を少し吐いて
俺に 一言ごめん、忘れて。と呟いたあといつもの明るい声色で何事も無かったかのように話しはじめ今日はもう遅いから帰ると言い足早に部屋を出ていった

彼奴と出逢ったのは俺が通信制に入学して2回目の夏

平日の昼過ぎ社会人や全日制の学生たちが汗水たらしながら働き勉強をしている時間帯
俺が人が滅多に来ない場所にある小さな丘で楽器の練習をしていた時に出逢った。

彼奴は後ろから「その曲俺好き!」と人懐っこそうな笑顔で話しかけて来てまさか人に聞かれていたなんて、と驚いて固まっている俺を他所に「他にもなんか弾けるの?」と陽気に話しかけてきたのだ。
それから戸惑いながらもよく弾く好きなアーティストの曲や今流行りのアニメのOP曲なんかを数曲弾いてやったらすごく喜んでくれたのを覚えている
それからは世間話をしてお互いの事について話し合ったりした
彼奴はとても話しやすく、趣味も似ていて話し込んでいたらあっという間に時間が過ぎた。
夕方頃にもう俺帰らなきゃ、と言った彼奴と連絡先を交換し「また明日、今日と同じ時間にここで会おう」と言われ
わかった と一言返しお互い家に帰った。

家に帰ってからもずっとメッセージのやりとりをしていて分かったことがある。
どうやら彼奴は不登校であまり学校に行っておらず俺の家から結構近い所に住んでいる、という事だ

次の日も昨日と同じ時間小さな丘の上であいつと待ち合わせをして彼奴と色んな話をしてどんどん親しくなり、気が付けばお互いの家に行き来したり一緒に遊びに出かけたりと親友になるのにそう時間はかからなかった。
それから数年経った時

家に遊びに来てた彼奴がふとした様に初めて出逢った時
本当は自殺を考えていたと言う事を教えてくれた
「あの時兄貴と出逢えて本当に良かったと思ってる、救ってくれてありがとう」と言われた。

彼奴は照れ臭くて言いづらい事があると俺の事を兄貴と呼ぶ癖があり、勇気をだして話してくれたんだなと思いながら信用してくれているという事に嬉しくなったが、彼奴が言う程
俺は何もしていないし、あの時は俺も漠然とした不安に襲われて精神的に不安定な時期でもあって、そんな不安から救ってくれたのはいつも明るく話し掛けてくれたあいつのお陰なのだ、救ってくれてありがとう感謝をしたいのは自分の方だった。



そして俺はそんな彼奴に告白された





━━━今までずっと気の合う親友と思っていた男であり俺が初めて恋愛的に好きになった人間に告白されたのだ。
忘れてと言われて忘れられるわけが無いだろ━━━━