すれ違い
考えの合わないあの人
昔からいつも、ぶつかり合う
いいときも知っているから
なかなか嫌いにはなり切れない
好きでいたかったなあって
何度も何度も諦め切れず
話しかけては失望する
すれ違い続けていくうちに
やがて心は離れていく
変わってくれることを期待したり
変えてみせると努力したけど
いつも振り出し、同じところ
大好きで、いたかったなあ
わかり合って、みたかった
鋭い眼差し
舞台の上には 一人の男
脇を固めるは 二人のギタリスト
背後には ドラムとベース
男は暗闇のなか 止まぬ歓声を浴び
不敵な笑みを浮かべたまま
マイクスタンドに手をかけた
幕が上がり 光が照らす
歓声は最高潮に達する
男はその鋭い眼光で客席を睥睨し
曲が始まった
愛と死を歌い
舞台に生き 舞台で散った
僕の愛しのロックスター
櫻井敦司よ、永遠に
重低音が BUCK-TICKする
高く高く
伝えたいことがあって
それは風に乗って、海を越え
山々の間を縫い、川の流れに沿って
遠く異国の大地まで
狭くなってしまったこの世界で
本当に大事なことは届き難くて
いつも雑音に掻き消される
届けたい、この言葉は
見上げた夜空より、高く高く
多くの人に、心に
深く静かに、染み渡るように
いつの日か伝わることを願っている
誰もが、幸せになれますように
子供のように
大人になると
思うように泣けなくなる
人目とか 体面とか プライドとか
余計なものが邪魔をして
心をさらけ出すのが難しくなってくる
『泣きたいときに 泣いておけばよかった』
歳を取ると
思うように泣けなくなる
痛みとか 苦しみとか 別れとか
そんなものに慣れてしまって
心は柔らかさを失い麻痺してしまった
『泣きたいときに 泣いておいた方がいい』
子供のように泣きじゃくる
そんな大人を かっこ悪いとは思わない
いつまでも無くさず この胸に
放課後
終業の鐘が鳴る。
生徒たちは疎らに帰り始め、やがて教室には、僕一人が残された。沈んでゆく夕陽が、僕の頬を照らす。
誰もいない教室。
なにをするわけでもなく、ぼんやりと窓際の席に座り、外を眺める。通学路からは、帰っていく生徒たちの話し声が聞こえ、遠ざかっていく。
友だちとなにかあったわけでもない。教師に怒られたわけでもない。親と喧嘩をして、家に帰りたくないわけでもなかった。
ただ時折、なんとなしに感傷的な気分になり、一人教室に残っては、ぼんやりとすることがたまにある。
秋の夕暮れ。
肌寒くなってきたせいだろうか。
季節の変化と、時間の流れは、時に人を感傷的にさせる。
酷く寂しいような、悲しいような。
生徒たちで賑やかだった教室に、一人残っては、そんな感傷に浸る放課後。
陽ももう沈みきる。
辺りは暗くなり、更に寒くなるだろう。
僕は席を立ち、鞄を手に取ると、教室を出た。
人気のなくなった校舎は、誰の気配もなく静かで、いつもと変わらないものだった。
家路に着き、いつもと変わらない日常へと、戻っていった。