#木枯らし
木枯らしが吹く。
寒い寒い冬の訪れを感じさせるこの音が俺は嫌いじゃぁなかった。
草木も動物も眠り、誰も彼らの眠りを妨げない。
俺も、冬眠してぇなぁ…。なんて、な
#この世界は
この世界は絶望に満ちている。
戦争、虐待、犯罪。どれもこれも人間が人間であるが故に繰り返されていて、話を聞く度、ニュースで目にする度、穢らわしいとさえ思う。
なんで僕は人間に産まれてしまったのだろう
#夢を見てたい
夜、微睡みの向こうに幸せな夢が待っているから、僕は何よりも睡眠を優先する。
本当は仕事もせずに日がな一日ただ夢の中にいたい。
だって、夢なら自分は何者にでもなれる。
医者に、警察官、弁護士、検事、社長にアイドル、そして諦めてしまった小説家にだって。
夢の中なら全部全部思いのまま。
僕は、辛い現実から目を背けていたいんだ。
#寒さが身に染みて
今季は随分暖かいと思っていたら、いきなり寒くなってきた。
寒さが身に染みて、身震いするほどだ。
でも、こんな日だからこその楽しみがある。
炬燵の上にカセットコンロをセットする。反射式ストーブの上にはお湯を張った鍋を乗せ、徳利に入れた日本酒を温める。
カセットコンロの上には好みの鍋を準備して、熱燗が出来たら、鍋をつまみに熱燗をくいっと一杯。
冬は嫌いだが、こうやって過ごすと少しだけ好きになれる。
#色とりどり
色とりどりの傘が眼下を過ぎる。
こんな雨降りに上を見上げる奴なんかいやしないから、俺はフェンスを乗り越え、雨に濡れたアスファルトの上に腰を下ろして、最後の煙草に火を付けた。
カチッと音を立てながらライターで火をつける。
大きく息を吸って汚らしい煙を肺いっぱいに吸い込むと、くらりと目の前が回った。
久しぶりのこの感じにちょっとした快感を覚えて、まだ死にたくねぇなぁ、と脳の片隅で思ったが、どうせ元々あと少しの命だ。病気のせいで死ぬぐらいなら、自分で人生を終わらせたい。
なんてことを考えてたら、唇にチリと痛みが走った。
いつの間にか火がすぐそこまで来てたらしい。
俺は水溜まりに燃えさしをジュと押し付けて、その場に立ち上がった。
そのまま1歩足を前に踏み出せば、あとは真っ逆さまに落ちていくだけ。
ーーあっけねぇなあ。人生ってのは。