#声が聞こえる
昔から僕には聞こえちゃいけないモノの声が聞こえてた。
ほとんど何を言っているかは分からないけど、時たまか『殺してやる』とかの強い恨み言は聞こえたりするけれど。
ほら今も、僕を殺そうとするモノの声が聞こえる
#秋恋
あなたに初めて会った時電撃が走ったの。
雷のようって本当だったのね。
あれから季節が一周した。
あなたの隣には今、私がいる。
あなたに出会った秋は今では私にとって一番好きな季節。
#大事にしたい
僕にとって君は唯一無二の親友だから。
君に何かあったらと思うと怖くて悲しくて。
だから、本当は僕から離れないで欲しいんだ。
けど、君を束縛するのはおかしいだろ?
僕だって君を大事にしたいんだ。
だから、思ってることは全部教えて欲しい。
君のためなら、我慢だってするから。
#時間よ止まれ
姉が死んだ。妹が死んだ。友人が死んだ。
俺にとって大切な人がどんどん亡くなっていく。
止めてくれ、これ以上俺から大切なものを奪わないでくれ。
これ以上大切な人が居なくなるくらいなら、時間よ、止まれ。
そうすれば俺はこれ以上大切な人を見送らなくて済むから。
時間よ、止まってくれ……。
#夜景
キラキラと光る橋、ビル、民家。
綺麗だなぁとぼんやり眺めていたら、いきなり背後から肩を掴まれ振り向かされる。
なんだなんだと背後に目を向けるとそこには厳しい顔をした中年のサラリーマンが一人。
「あんたはまだ若いんだから、早まっちゃいけない!!」
こいつは何を勘違いしているのだろうか。
「あの、「生きていれば良いことはきっとある。だから」あの!!」
私が声を張り上げると、ビクッとして肩からやっと手を離した。
「あの、別に私、死のうとなんかしてないんですけど。」
「え、?」
やはり彼は私が自殺しようとしているのではないかと早とちりしたようだ。
「じゃあ、なんでこんな時間にこんなところに突っ立ってたんだ。」
「別に、仕事終わりにここを通りかかったらいつもは見ていなかった景色が思ったより綺麗だったんで見てただけですけど」
「そ、そうか。はやとちりしてしまってすまない。」
彼は恥ずかしそうに早口にそう言って歩き去っていった。
「今回は間違いだったけど、たまには他人に心配されるのも良いもんだな。」
若者はそう独りごちて、また1歩自宅に向かって歩みを進めた。