#麦わら帽子
風に吹かれて飛んでいったあの麦わら帽子は今どこにあるのか。
誰も、誰も知らないところで朽ちているのか、はたまた誰かが見つけて使っているのか、どこかへ落し物として届けられているのか。
分からない。
だけど、それはそれで良い。
きっとそれも『運命』というもののひとつだから。
#終点
走って、走って、たまに歩いて、また走る。
そんな風に走り続けた人生ももう終わり。
今まで、走ってきた中でたくさんの人と出会い、そして別れてきた。
今ここに居るのは、その時に別れなかった人とその人との間にできた子供。
子供も、また結婚して、子供が出来た。
今では俺も立派な、と言えるかは分かんないけど、爺様だ。
このまま、妻が、子供夫婦が、孫が、彩り溢れる素敵な人生を歩めますように。
俺は人生の終点からそう願わずには居られない。
#上手くいかなくたっていい
別に対人関係も、仕事も趣味も上手くいかなくたっていいんだ。
ただ、自分のペースで、毎日少しでも、楽しかったな、って思えたらそれで良い。
僕はそんな気持ちで毎日を過ごしてる。
だって、それ以上を望んだらきっと、何もかもが面倒くさくなって、辛くなって、苦しくなって、僕は生きることすら諦めてしまうから。
だから、何かを上手くいかせようじゃなくて、上手くいかなくたっていい。ただ、息をするだけで偉い。そんな気持ちで生きると、息がしやすいと思う。
#蝶よ花よ
蝶よ花よと両親に育てられた兄は成人して直ぐに家を出ていき、今では音信不通。
僕は、両親に疎まれて育てられた。
何をやっても兄と比べられ、出来損ないと罵られた。
それなのに、なぜ僕がこんな両親の世話をしなければならないのか。
両親は「あなたのためだったのよ」と耳触りの良い言葉を並べているが、それでも僕はこいつらに虐げられた日常が思い出される。
こんなヤツらどうでもいい。
だから僕は決めた。
同じことをしてやろうって。
金は出してやる。
でもそれ以外は絶対しないし、なにかある度に罵ってやる。
それが僕からの最大の親孝行さ。
#最初から決まってた
あなたと離れることになるなんて、最初から決まってたこと。
わかってた。分かってたはずだったのに。
こんなに悲しくなるなんて思っていなかった。
あなたは私にとって神にも近しい方でした。
あなたが言えばこの命すら投げ出す覚悟がありました。
しかし、あなたが私に命令したのは生きろということだけ。
私は最初あなたを殺そうとしたのに。
あなたもそれを理解していたはずなのに。
それでも最期の命令は私が生きること。
あなたは優しすぎた。だから命を落とした。
少しだけ待っていてください。
私はあなたの命令に従い、生きましょう。
生きて、生きて、生きて。
寿命で死んで、そしたらすぐにでもあなたの所へ馳せ参じます。
その時は私の話を沢山聞いてくださいね。
あなたが死んだ後のこの世界が紡いだ物語を。