#私の名前
私の名前はいわゆるキラキラネームと言うやつだ。
生まれてこの方1回で読んでもらえることなんかなかったし、それどころか何回もなんて読むんだっけと言われてきた。
それは社会人になってからも変わりはなくて、それどころか自分の名前が恥だとしか思えなかった。
昔、親になぜこんな名前にしたのかと問い詰めたことがある。
親いわく、可愛いから。だそうだ。
そんなくだらない理由でこんな名前をつけるなんて。我が親ながら呆れるしかない。
だから私は決意した。
名前を変えることを。
親不孝だなんだと言われようと、しったこっちゃ無い。
勝手に言っておけばいい。
その名前で苦労したのも、するのも私なのだから。
これは自分で決めたこと。他人にどうこう言われる筋合いはないんだよ。
そう言って名前を変えた彼女は、前以上のキラキラネームになって戻ってきたのだった。
#視線の先には
君の視線の先には誰が居る?
幼い頃から僕は君を、君だけを見てきたのに。
君も僕だけを見てくれないか。
そんな事を思うのは、なんて身勝手だろう。
それでも、僕は君に見て欲しい。僕だけを君の瞳に映して欲しい。
なんて、そんな事を言う資格も勇気も無いんだけどね。
#私だけ
今日、私だけ居残りをさせられた。
補習だと教師は言うが、私のテストの平均は学年平均よりも上なのだから、補習なんか必要ない。
それなのに、なぜ居残りをさせられなければならなかったのか。
理解できない。
ただ、私は家に帰ってから、居残りをさせた教師に感謝しなければならない事を知った。
今日の18時。私がいつも通る通学路で飛び降りがあったらしい。
18時。それは私が毎日帰りにそこを通る時間だった。
#遠い日の記憶
昨日、山にカブトムシを取りに行くんだ!と期待に胸を膨らませ、意気揚々と山へ罠をしかけに行った少年を見かけ、私はその少年に昔の自分を重ねた。
自分もああやって期待に胸を膨らませ、カブトムシを捕まえに山へ行っていた時期もあったなぁ。と大人どころか初老という言葉が似合う歳になった私は遠い日の記憶を呼び起こした。
木の幹に少しだけはちみつを塗り、罠を仕掛ける。
そんな記憶を呼び起こしたからだろうか。その時の少年心がみるみるうちに、心の底から顔を出した。
明日は久しぶりに孫でも誘ってカブトムシを捕まえに行こうか。
きっと楽しい一日になる。そう思うとワクワクが止まらなかった。
#空を見上げて心に浮かんだこと
幼い頃、空に浮かぶ雲は誰かが描いたものだと思っていた。
自分よりも何倍も大きな大きな人が、大きな画用紙いっぱいに青い絵の具を垂らして、白い絵の具で雲を描く。
そして、描き上がったら空に画用紙を広げる。
でも、自分からそんな場面は見えなかったから、きっとお空の上でそういうお仕事をしている人が居るのだと思っていた。
それを今日の青空を見て思い出した。
あの時は純粋だったな。
大人になって、要らない知識も増えた自分ではもう考えられないその思考に、あの時の純粋さが眩しくて、少し寂しくなった。