#入道雲
僕の日常は毎日が雨模様。
生きてて良かった、なんて思った事は生まれてこの方覚えてる限りでは1度もない。
友達が出来てもいつの間にか嫌われる。
親には捨てられて、顔すら覚えてない。
毎日毎日死にたくて、だけど死ぬ勇気なんかなくて、ただ無気力に生きる。
こんな事ばかり考えてたらまた死にたくなってきた。
あぁ、今日も心の中には入道雲が立ち込めてきた。
#夏
夏が来ると毎年思い出すことがある。
そう言ったのは友人のA。
何何?暇を持て余していた俺はAのその話を聞くことにした。
いや、な?昔、池で溺れたことがあったんだよ俺。その時に助けてくれてのが誰だったかなってさ。
はあ?そんなの親とか救助のひととかじゃねぇの?
俺はそう言って、なんだと肩透かしを食らった気分だ。こいつの言う昔がどれほど前のことかは知らないが、きっとこいつを助けたと言うなら大人だろう。
しかしAは違うんだ、と言った。
いや、大人じゃなくて子供なんだ。これは確実。でも、助かったあと目を覚ましたらどこにもその子どもの姿は無くてさ。親とかに聞いても知らない、お前は多分運良く岸に辿り着いたんだろって。
おかしいよな。
お前の気の所為じゃねぇの?
いやぁ。それも考えたんだけどさ、約束を覚えてんだよな。その子と交わした、10年後に迎えに来るねって。約束。
それで、10年後っていうのがさ、今年、なんだ。
そうひとりごちるAの後ろにはナニカが立っていた。
――さあ、イキマショウ。ヤクソクノトキダヨ
#ここではないどこか
君と出会えたことは、僕にとって何よりの幸福だったよ。
そう言った彼はもう居ない。
彼は旅人で、一つ所に留まるような人では無いことは分かっていた。
それでも彼と恋をした。
ひと夏の恋、というと聞こえは良いが、実際は彼の束の間の情事の相手役だ。
期間限定の恋だと分かっていたからこそ、私たちの愛は燃え上がった。
彼がここを離れると言った日に、私は彼の足元に縋り付いて行かないでと懇願したけれど、それでも彼はここでは無いどこかへ向かってまた、歩きだした。
#君と最後に会った日
君と最後に会ったのはいつだったろう。
久々に会って、呑んで。
今日は楽しかった、またね。そう言って別れたはずなのに君とはそれっきり疎遠になってしまった。
何故だろうか。君に連絡をしても返事は来ないし、既読もつかない。
ねぇ、君は今、どこで何をしているの?
#繊細な花
花はどれもこれも繊細で、ボクがしっかりお世話をしないと枯れてしまう。
だから、毎日毎日愛情を込めて花の世話をする。
そうするとお礼、とでもいうように綺麗に咲いてくれるからやり甲斐もある。
ボクにとっては彼女も同じ。
ボクの愛情で綺麗な笑顔を咲かせるのを隣で見られるのが幸せなんだ。
でも最近、君はボクの前で笑顔を見せてくれなくなったね。
何でだろう。
君の笑顔が見れない事がこんなにも苦しい。
ねぇ、君の笑顔が見たいんだ。どうすればまた笑ってくれるのかな。教えてよ、、。
――これはいつまでも彼女が死んだことを受け入れられない男の話。