神埜

Open App

#夏

夏が来ると毎年思い出すことがある。

そう言ったのは友人のA。
何何?暇を持て余していた俺はAのその話を聞くことにした。

いや、な?昔、池で溺れたことがあったんだよ俺。その時に助けてくれてのが誰だったかなってさ。

はあ?そんなの親とか救助のひととかじゃねぇの?
俺はそう言って、なんだと肩透かしを食らった気分だ。こいつの言う昔がどれほど前のことかは知らないが、きっとこいつを助けたと言うなら大人だろう。
しかしAは違うんだ、と言った。

いや、大人じゃなくて子供なんだ。これは確実。でも、助かったあと目を覚ましたらどこにもその子どもの姿は無くてさ。親とかに聞いても知らない、お前は多分運良く岸に辿り着いたんだろって。
おかしいよな。

お前の気の所為じゃねぇの?

いやぁ。それも考えたんだけどさ、約束を覚えてんだよな。その子と交わした、10年後に迎えに来るねって。約束。
それで、10年後っていうのがさ、今年、なんだ。
そうひとりごちるAの後ろにはナニカが立っていた。

――さあ、イキマショウ。ヤクソクノトキダヨ

6/28/2023, 3:05:54 PM