#あなたがいたから
あなたがいたから今まで生きてこれたのに。
なぜあなたは私を置いていってしまったの?
私は言ったでしょう。あなたが先に死んだら後を追ってやるって。
その時あなたは重いなぁ、なんて軽くあしらったけれどべつに冗談のつもりは無いのよ私。
ねぇ、私を置いていかないで、置いて、行かないでよ、、、。
あと少しだけ待っていて。
すぐにあなたを追いかけるから。
#相合傘
相合傘ってさ、愛愛傘とか相逢傘って書くこともあるけど、人間は恥ずかしくないのかな。
ただひとつの傘をさすだけなんでしょ?
なんでわざわざ愛とか逢みたいな恋愛ごとに絡めようとするんだろう。
仲が良くないと出来ないからかな。
でも、仲が良いだけでいいならさ、別に友達同士でやってもいいんでしょ?
それとも、私たちはこんなに愛し合っているのよ!って見せつけたいのかな。そういう人間たちほど別れるくせにね。
うーん、愛、かぁ。僕には分からない感情だよ。
ねぇ、博士。僕にも分かるかな。
――これは産まれたばかりのロボットが、まだ見ぬ恋に焦がれるお話。
#落下
おちる、落ちる、堕ちる
あなたを好きになってから私はどんどん自分が自分でなくなってきた。
あなたに嵌れば嵌るほど、もっともっとと貪欲になる。
あなたを知りたい、あなたに知って欲しい。
あなたを愛したい、あなたに愛されたい。
ふふふ、愛という感情をよく分かっていなかったけれど、こういうことを言うのかしら。
あなたの全てを知ることが出来るなら、私はどこまでもおちていけるわ。
あなたはきっと許してくれるでしょう?
だってあなたも私の事が好きだと言ったものね。
おちる、落ちる、堕ち、た?
#未来
未来の私は何をしているかしら。
昔はよくそんな事を考えていたっけ。
夢は沢山あった。
幼稚園の頃はケーキ屋さん。
小学生の頃は警察官。
中学生の頃は介護福祉士。
高校生の頃は小説家。
どんどん難しい夢を見ては挫折して、大学生で私は平凡、いやそれ以下の人間だと改めて自覚して。
苦しかった辛かった。少しでいい特別な人間になりたかった。
テレビやSNSを見る度に同い年の『トクベツ』な人を見つけては勝手に嫉妬して。
あぁ醜い。気持ち悪い。なんでこんな考え方になってしまったの。ただ少し、夢を見ていただけなのに。
私には分不相応。
そんな事分かってる。
それでも夢を見たっていいじゃない。そう思えたら良かったのに。私はそんなに強くなれなかった。
だからね、もう未来を考えることはやめたの。
死ねばもう未来のことなんか考えなくても良いでしょう?
だって、そこにあるのはただの『無』、だもの。
#1年前
1年前の今日、僕は事故にあった。
起きた時には全て終わったあとで、僕を轢いた人は捕まっていた。
家族は僕が事故にあったっていうのにいつも通りギスギスしてた。父と母は口喧嘩ばかり。妹はずっとスマホをいじっていた。
ある意味いつも通りと言えばいつも通り。
だけど息子が事故にあったんだからこんな時くらいは喧嘩をやめろよな。そう言ったけど無意味だった。
妹は妹でスマホを弄っていたかと思うと誰かと電話を始める始末。
1年、1年だ。
僕は1年我慢した。それでも何を言っても無駄だった。それならもう僕は諦めるよ。あなた達と家族でいることを。――バイバイ
その日、とある家族の家が火事で焼けた。
その一家の住民で生き残ったのは唯一、1年前に事故にあい、ずっと植物状態のまま病院で眠る息子だけだったそうだ。