川柳えむ

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8/24/2025, 12:00:56 PM

 見知らぬ街に辿り着いた。
 やって来ようと思って来たわけじゃない。偶然だ。
 でも、見慣れない街は新鮮で、ちょっとそこのお店に入ってみようか。なんて思ったりして。

 ――そんな場合じゃないんですけど。
 通勤電車で寝過ごしちゃって、気付けば知らない駅にいて。でも、もうこうなったら、開き直りですよね……。


『見知らぬ街』

8/24/2025, 9:00:08 AM

 夜景を撮ろうと、高いビルの上でカメラを構えた。
 雨が降っていて、コンディションは最悪だが、これはこれで味があるというもの。
 シャッターを何度も押す。
 良い一枚が撮れたと思った瞬間、視界の先に一筋の稲妻が見えた。辺りが明るく照らされ、大きな音が響く。
 遠くで雷が鳴っていることは気付いていた。
 タイミングがあと少し違えば、稲妻が走る瞬間が捉えられたのに!
 その後、頑張ってその瞬間を撮ろうと待ってみたものの、全然タイミングが合わず。遠くの雷はいつしか消えていってしまったのだった……。


『遠雷』

8/23/2025, 5:39:19 AM

 深い闇の色をした海に、深夜、一人沈んでいく。
 どこまでも深く深く、奥底まで。
 水の中に、溶けていく。

 ――助けてくれ!
 慌てて飛び起きると、あの海と同じ色をした布団に、まるで小さな海のような水たまりができていた……。


『Midnight Blue』

8/22/2025, 8:25:05 AM

 生まれた時からずっと一緒だった。
 そしてきっとどこまでも一緒なんだと、疑わなかった。
 だからこれからも、変わらずずっと一緒にいるよ。

 新しい地に、また変わらず君と二人で。


『君と飛び立つ』

8/20/2025, 10:54:58 PM

 きっと忘れない。

 そう思っていても、人間は忘れていく生き物。
 楽しい記憶だって、辛い記憶だって、いつかは消えてなくなる。
 だからこそ、生きていけるのかもしれない。

 そう。忘れるから、生きていけるんだ。

 棚の上に飾られた、幸せそうに笑う最愛の人達の姿を見て、ロープを首にかけた。


『きっと忘れない』

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