見知らぬ街に辿り着いた。
やって来ようと思って来たわけじゃない。偶然だ。
でも、見慣れない街は新鮮で、ちょっとそこのお店に入ってみようか。なんて思ったりして。
――そんな場合じゃないんですけど。
通勤電車で寝過ごしちゃって、気付けば知らない駅にいて。でも、もうこうなったら、開き直りですよね……。
『見知らぬ街』
夜景を撮ろうと、高いビルの上でカメラを構えた。
雨が降っていて、コンディションは最悪だが、これはこれで味があるというもの。
シャッターを何度も押す。
良い一枚が撮れたと思った瞬間、視界の先に一筋の稲妻が見えた。辺りが明るく照らされ、大きな音が響く。
遠くで雷が鳴っていることは気付いていた。
タイミングがあと少し違えば、稲妻が走る瞬間が捉えられたのに!
その後、頑張ってその瞬間を撮ろうと待ってみたものの、全然タイミングが合わず。遠くの雷はいつしか消えていってしまったのだった……。
『遠雷』
深い闇の色をした海に、深夜、一人沈んでいく。
どこまでも深く深く、奥底まで。
水の中に、溶けていく。
――助けてくれ!
慌てて飛び起きると、あの海と同じ色をした布団に、まるで小さな海のような水たまりができていた……。
『Midnight Blue』
生まれた時からずっと一緒だった。
そしてきっとどこまでも一緒なんだと、疑わなかった。
だからこれからも、変わらずずっと一緒にいるよ。
新しい地に、また変わらず君と二人で。
『君と飛び立つ』
きっと忘れない。
そう思っていても、人間は忘れていく生き物。
楽しい記憶だって、辛い記憶だって、いつかは消えてなくなる。
だからこそ、生きていけるのかもしれない。
そう。忘れるから、生きていけるんだ。
棚の上に飾られた、幸せそうに笑う最愛の人達の姿を見て、ロープを首にかけた。
『きっと忘れない』