あー! あのニンゲン、本当に嫌い!
誰が触っていいって言ったのよ! それに、寝てる時に触ってくんじゃないわよ!
オカーサン? オカーサンはいいの! いつもご飯くれるし!
たまにしか来ないくせに、我が物顔で家の中を歩いてんじゃないわよ!
おもちゃ出されたって知らないわよ、ヘタクソ!
だ・か・ら、触ってくんじゃないわよ! やめてってば!
……お腹空いたわね。
丁度いいところにいるじゃない。
ご飯ちょうだい♡
あら、おいしいカツオブシまで乗ってるじゃない。気が利くわね。
しょうがないわね。さっきの嫌いっていうのは撤回してあげるわ。
ご飯食べ終わったところを触ってくんじゃないわよ!
やっぱり好きになれないわ、このニンゲン!
……まぁ、大っ嫌いってほどでもないわよ。ご飯おいしいし。
でも、好きにはなれないわ!
だから、触らないでちょうだい! やめなさいよ、もう!
『好きになれない、嫌いになれない』
夜が明けた。
あんなに暗く静かだった夜は終わって、晴れやかな朝がやって来た。ギラギラ光る太陽が世界を照らす。
どんなに暗く長くても、終わらない夜なんてなかった。いつか朝が来るって、知っていたんだ。
あまりの眩しさに太陽を睨んだ。と同時に、思わず笑みがこぼれた。
そう。夜が明けてしまった。
でもテスト範囲の勉強がまだ終わってない! 今日はテストだっていうのに! 授業をサボりすぎた! 授業出ても寝てたし! さっぱりわからん!
終わるなよ夜! もうちょっと続けよ! 来るなよ朝! もうちょっと待ってくれ!
はぁ……もう開き直るしかない。って、思わず笑ってしまったんだ。
『夜が明けた。』
ふとした瞬間に目が合った。
いつもなら、こんな風にずっと見てしまったりしない。
でも、見てしまう。
気になるの。
なんで額にでかめのテントウムシついてるの。
見ちゃうよ。そりゃ見ちゃう。
気になるよ。そりゃそうでしょ。
あなたはみんなの視線を釘付けにして去っていった。
テントウムシとお幸せにね(?)
『ふとした瞬間』
知らない番号からスマホに電話が掛かってきた。
普段なら出ないところだが、操作を誤って電話に出てしまった。
「……もしもし?」
スマホの向こうから叫び声が聞こえた。
「え? ど、どうしたんですか!?」
何か事件でも起きたのか? 慌てて尋ねると、
『そ、そなた様は、その板の中に閉じ込められておられるのですか?』
予想外の返答が返ってきた。
話してみると、どうやら、電話の先は遠い遠い過去の時代のようだ。なぜか板――スマホが落ちていて、触れたら俺の声がしたという。
――そんな馬鹿なことあるか? 俺が騙されている可能性の方が遥かに高い。
でも、相手の話を聞くのがなんだか楽しくて、思わずしばらく話し込んでしまった。
そして、気付けばスマホの充電が残り少なくなっていた。充電しないと――。
そう考えて気付いた。相手のスマホの充電はどうなっている?
「画面の右上の数字はいくつになってる?」
『――……?』
わからないか。まぁ仕方ない。
でも、結構長時間話し込んでしまっているから、もう充電があまり残っていない可能性の方が高い。
電話の先は遠い過去の時代。たぶん、充電できる環境でもないだろう。
話を終わらせたくない……。でも、その時は近付いている。
「あの……俺、いつか会いに行くよ。きっと、会いに行く方法を見つけてみせる」
スマホが過去にタイムスリップしているんだ。タイムマシーンだって、きっと作ることができるはずだ。
「だから、それまで待っていてくれないか?」
『……はい。ここにて、ずっとお待ちしております』
その返事と同時に、電話は切れた。スマホの充電が落ちたのだ。
充電して折り返してみたが、もう二度と繫がることはなかった。
でも、俺は諦めない。
スマホの電源が点くように、俺の心に光が灯り、電話が鳴るように、心臓が高鳴った。
どんなに離れていても、いつか君のもとへ辿り着いてみせるから。
『どんなに離れていても』
宇宙へ電波を発信し、我々地球人は返事を待っていた。
長い時を経て、宇宙から反応があった。
興奮して思わず歓声を上げた。受信した電波を急いで解析する。
そうして、解析できた言葉が、
『こっちに恋』
だった。
「どういう意味だ?」
解析チーム全員が困惑している。「こっちに来い」の誤変換だろうか。いや、間違いはないはずだ。
この電波を発信した宇宙人側のミスかもしれない。きっとそうだ。どちらにせよ、来てほしいと言うことだろう。この宇宙人達がいるところへ。
でも、もし、これが誤変換でも何でもなかったとしたら?
我々が送った電波を受け取った宇宙人は地球人に恋をして、地球人に自分達のところへ来てほしい。そういう意味で送ったんだとしたら?
何にせよ、行くのは難しい。なぜなら、我々にはまだそこまでの技術がないからだ。
だから、宇宙に向けて、新しく電波を発信した。
『愛にきて』
『「こっちに恋」「愛にきて」』