僕の手をまずにゃんこの無力な手とつないで(ぽふっ)、
にゃんこの手を君の手につなぐ。
そして君の手を僕の手に。
こうして僕とにゃんこと君とで円環を作り、
世界中の車の下にいる猫を逃がす呪文を唱えたい。
手を取り合って 完
天動説が信じられていた時代、地動説を唱えるものはきっと異端者扱いだったに違いない。
これまでずっとそうだと信じていたものが、そうではないと知る感覚はきっと斬新で新鮮で刺激的な体験に違いない。
そう、当たり前など何もないんだ。
L(長さ)D(奥行)H(高さ)のディメンションで立方体だと思っていたこの世界と、私が変わっていく予感がしていた。
なぜかはわからないけれど、そんな予感がしていた。
この世界にはもう少しちょっと上の次元がたくさんあって、そこでは私たちのような なにかが、私たちのこの世界のように当たり前に存在していて、当たり前のように生活しているみたいなのだ。
『そう、空間に含みがあることに、君は気づいたんだね。』
『君たちは自分の住んでいるこの空間が主役だと思っているのかい?』
『僕らの空間から眺めれば、この空間も脇役に見えるさ。』
そう近未来ロボットアニメイションの銀髪の彼に似た彼が言った。
それはさながら、時空間の天動説と地動説といったところだろうか。
『君たちが思ってる以上にこの世界は複雑なのさ。』
『でもシンプルさ。』
『それはさながらカゴから出る鳥のようにね。』
『その役目を、僕は託されたんだ。』
そう言いながら、近未来ロボットアニメイションの銀髪の彼に似た彼の銀髪は風に揺れていた。
『これまでずっとそうだと思っていたものを、信じてやまないなんて…君は素直なんだね。』
そうやって、銀髪の彼はそっと笑ってみせた。
その彼の笑顔に私はなんだか気恥ずかしくなって、すべてを見透かされているような気がして、そっと小さく頬を紅潮させた。
そうして私は、少しずつこの世界の蓋を一つ一つ外してみることにした。
それはとても刺激的な体験だった。
まだ見ぬ時空間の新しい私。
銀髪を揺れさせた風に風鈴が揺れていた夏の午後だった。
今年の夏は暑くなるだろうな、と思った。
『これまでずっと』 ー完ー
「逆にイライラする度に親切にしてみたらどうだろうか」
そう言われて私は、はたと気づいたのだ。
そうさ、すべてはそれさ。
本来の君は豊かさと愛に満ち満ちているんだ。
嫌なことがあるたびに心を曇らせているだけなんだ。
それはエゴさ。
本来の君は黒ごまプリンにも、寒天ソーダにも、目玉焼きホットプレートにもなれるのさ。
そう近未来ロボットアニメイションの銀髪の彼に似た彼に言われ、
私はわたしであって私でなくて、地平の先にあるであろうわたしにも思いを馳せたのだ。
本当の私は、
きっとずっとここで眠っていたのに違いなかったのだ。
『目が覚めると』 ー完ー
だからって寒天ソーダを毎日食べなくてもいいじゃないか。
だいたい寒天ソーダとはなんなのだ?
なにかはわからないが、それを、私は、食べて、毎日、いたの、だっ、た。
ー完ー
街灯のない道のほうが落ち着くんだ。
ほら、夜の墓地だって落ち着くだろう。
夜の墓地で問うてみたところで答えはなかった。
ー完ー