どうか許さないでほしい。
そんな悲しげな顔をするくらいなら、優しい言葉なんていらない。
ありとあらゆる憎悪をぶつけて、口荒く罵って、頭の先から存在まるごと否定してくれればいい。
それくらいはしてくれないと、裏切る側というのは、本当にどこまでいっても救われない存在だ。
着々と、惨めな想いを重ね続けることしかできない。
でも、その優しさを受け止めなくして、私は生き長らえる意味がない。
あなたの優しさは、そのまま私への罰になる。
外はいいお天気なのに、頭には重たい低気圧がとぐろを巻いてのし掛かっているよう。
鎮静剤のせいかもしれない。出血が止まるまで、しばらくは十分に動けない。飲むことも食べることもできない。
健康的な身体というのは、「無」から一番離れたところにあるのだとつくづく思う。
容姿を人と比べては落ち込み、可愛くないのは努力をしていないせいだからだと知らず知らずに自分や他人を追い込んで、snsの世界と現実の境目がぼやけていって、どんどん痩せたがる、同年代の人たち。
充分に可愛いのに、「整形をしたい」と涙するほど本気で悩む友だち。見た目だけがこの世界の、人生のすべてかのように煽動される時世の空気。
ああみんな、健康的な身体でかわいそうと思ってしまうこともある。
#今日の心模様
バニラアイスのうえにのってるやつ。星粒みたいでかわいい。口にいれると、やさしいミルクの風味と一緒に溶けて、たちまちになくなってしまう。
ゴーギャンが描いたタヒチの絵。南国の温度を感じる、荒々しくて力強いタッチの、どこか遠い影のある色彩。
消えゆく原色と乾かない絵の具。暇な心に、雪のように沈着している。
空からいちばん近いところにいる感じ。
でも海の底のようにも思える。
静かでいい。
#今日の心模様
楽園
悲しみも苦しみもないのではなく、悲しむことも苦しむことも忘れてしまったのかもしれない。
涙を忘れて、傷つく心を忘れて、生のバランスを宙に浮かべて過ごしている状態というのは、多分人にとっての幸福と似た感覚でもあり、危ういのだろう。ともかく、最初の人間は追放された。
たとえそこに不時着できたとしても、この世のおよそ美しいといえるものたちがいつも刹那的であるように、永くいられる場所ではないのだとは思う。
それでも、ふとした日常の狭間に、目を閉じてみる。
そうしたら、冷たい砂漠に落ちるように、はたまた真冬の夜空が広がるように、
そこにパラダイスがあることを、夢にみる。