短編小説 しらたま

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6/15/2024, 2:56:24 PM

親友と喧嘩した。きっかけは小学生のようだった。
高校生で初めて出来た友達ととても仲が良かった。毎日挨拶を交わし、無駄口を叩き、予鈴がなるまで一緒に話して……。瞬きをして涙が出ていたことに気づいた。これまでの日々が無くなってしまう未来が視えてしまった。

「本当は好きな本を語りたいだけなのに…。」

視えた未来は大体変わらない。体が恐怖で最悪のイメージを助長し、心を真っ暗闇に連れ込んだ。

6/3/2024, 11:03:47 AM

失恋ってその気持ちが失われることでは無いんだよね。
だから失うんじゃ無くて自ら捨てるんだら。その思いを。

恋は冷めたか捨てたかでしか終わらないんだよ。

人は感情に名前を付けたがる。でもそれは言葉がその人の想いの全てでは無い。きっと本質は汲み取るしかないんだよね。

つまり、気持ちは人が豊かに生きている証拠なの。
それだけだ。

5/29/2024, 11:28:34 AM



〜「ごめんね。」〜

この一言さえ言えたら人は立派になれる。

遅刻したのに「ごめん」の一言すら言えないヤクザのような教師がいた。それどころか「おい、始めんぞ」と威張っている。
だから文句を言った。
「遅刻してその態度はおかしいと思いますよ?」
「保健室に生徒を連れてってその言い方はなんだよ。」
強い口調で言い返されて思わず怯んでしまった。そして「それは知りませんでした。ごめんなさい。しかし、それなら事情を説明するなりするのがお互い不快な気持ちにならない。そう思いませんか?」
僕は偉いんだ。そう言い聞かせてヤクザ教師の恐怖に耐えた。
ヤクザ教師は椅子を床に叩きつけるように置いた。その瞬間、時間が止まったように空気が凍った。




その日以来、ヤクザ教師は授業に遅刻しなくなった。根本の解決は申し訳ないがクラスの皆も不快な気持ちになってない。勇気を出して良かったと心から思った。そして、クラスメイトの「委員長よく言った!」と労いの言葉があるだけで「気にしなくていい」と思えるようになった。

5/29/2024, 9:48:44 AM

「ねーねー。風弥?」
「どした?」

〜「どうしていつも半袖なの?」〜

その一言で思い出が溢れてくる。
僕はかつて吹奏楽をやっていた。そして高校でベースを兼用するようになってからのことだ。
ある女子に言われた言葉が心に深く突き刺さった。
「制服にベースって似合わないね。」
いつもなら、高校に入って明るくなれた僕はその時だけ真に受けてしまった。直後に先輩が「去年の先輩も制服だから別に違和感ないよ」とフォローしてくれた。
あれ以来、校則ギリギリの範囲でしっくりくる格好を試行錯誤していた。だけども、気付いた時には冬になっていた。指先が冷たくてベースを弾くのが困難だった。
ある日、音楽室の暖房が壊れてなまら暑くなっていた。そして中に来ている半袖のパーカーを露わにして合奏に望んだ。

「ありがとうございました」
部員による顧問への感謝が溢れるミーティング。後に片付けをしていた時に言われた、

「その格好イイネ! 特に半袖パーカーつと学ランって相性イイ!」
あの時の女子だった。
とにかく嬉しかった。嬉しくて嬉しくてふわふわした感触を覚えていた。

……


「ちょっと、風弥?」
言われてハッと気づき、時が動き出した。

「ちょっと昔を思い出してたんだよ。」


あれから10年で地球の環境は変わってしまった。
極端な地球温暖化対策によって二酸化炭素濃度が激減し、日本でさえ夏に氷点下付近になってしまった。そうなると半袖はほぼ下着同然と化す。製造量が少ない半袖はそもそも貴重品になってしまった。




「ベースに半袖パーカーが似合うと言ったのは君だからね。責任取り続けてよ?」
僕は今日も趣味に没頭する。

5/6/2024, 4:25:06 AM

君と出逢ってから世界がガラッと変わったよ。
母の愛情は本物じゃ無かった。父の叱りも愛ゆえの鞭では無かった。そんな絶望を反転させたのは君だよ。
だからさ、僕も君の人生を変えてやる。

星空降り注ぐ田舎町にしては珍しく君以外の光が目に映らなかった。

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