短編小説 しらたま

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〜「ごめんね。」〜

この一言さえ言えたら人は立派になれる。

遅刻したのに「ごめん」の一言すら言えないヤクザのような教師がいた。それどころか「おい、始めんぞ」と威張っている。
だから文句を言った。
「遅刻してその態度はおかしいと思いますよ?」
「保健室に生徒を連れてってその言い方はなんだよ。」
強い口調で言い返されて思わず怯んでしまった。そして「それは知りませんでした。ごめんなさい。しかし、それなら事情を説明するなりするのがお互い不快な気持ちにならない。そう思いませんか?」
僕は偉いんだ。そう言い聞かせてヤクザ教師の恐怖に耐えた。
ヤクザ教師は椅子を床に叩きつけるように置いた。その瞬間、時間が止まったように空気が凍った。




その日以来、ヤクザ教師は授業に遅刻しなくなった。根本の解決は申し訳ないがクラスの皆も不快な気持ちになってない。勇気を出して良かったと心から思った。そして、クラスメイトの「委員長よく言った!」と労いの言葉があるだけで「気にしなくていい」と思えるようになった。

5/29/2024, 11:28:34 AM