短編小説 しらたま

Open App
12/27/2023, 2:21:23 PM

亡き恋人の唯一の形見だ。破れたりしてもまた縫い直して使い続けている。そもそもそんなに破けない。そんな鮮やかなピンク色の手袋を毎年使っている。
手袋を履くと彼女との日々を思い出す。お互いお金が無かったのにお揃いの物が欲しかった。すると彼女がある提案をした。
「手袋を1つ買ってお互いに片方ずつ持つとか?」
正直狂った提案だと思ってしまった。それだと片方が冷たいだけでは無いのか? しかし、よく考えてみると空いた手は繋げばいい。そう思って2人で買った。
真冬の寒い日のデートに2人で手を繋いで帰ったあの時。生涯忘れることは無い一時の1つだ。

社会人となった僕は今も形見の手袋を使っている。帰社する時にはいつも手にピンク色を身に付けている。ピンクは目立つから好きだ。いじめられた学生時代、僕を救ってくれたのは彼女とピンク色の□□□□だった。
「今日も寒いなぁ〜」
虚しい独り言が雪に溶けて消える。きっと溶けるのは彼女が聞いているからなのだろう。
「今日も仕事お疲れ様!自分!」



<私が人生で1度は書いてみたかったあとがき>

皆さんは□□□□にどんな言葉が入りますか? 僕はピンク色のTシャツを着てからいじめを気にしなくなりました。明るくなれたのはピンクTシャツのおかげなので今では週3で着用しています。僕はまだ中学生ですか皆さんもお仕事や勉学を頑張ってください!応援してます!

12/27/2023, 4:40:23 AM

変わらないものはない、絶対だ。
この一文でさえ矛盾しているのはおかしいだろうか?絶対とは何においても必ずという意味である。不変の必ず。クラスメイトたちは納得し確かに、と呟く者もいた。矛盾を子供に押し付けて困惑させる。数学のように複雑にしているだけではないか。
僕は学校が嫌いだ。それはいじめでも勉強嫌いでもない。ただただ人と関わると裏切られるからだ。修学旅行で友達を失った。自分は好きでも相手からは裏切られる。相手は友達が沢山だから切り捨てることに問題は無い。嫌な世界だ。


「しゅうとー。起きなさい。学校行くんでしょ?」
今日も今日とて生ぬるい地獄がやってくる。中途半端な温度が最も気持ち悪い。そして何かが吹っ切れたのを皮切りに学校は向かう…。その足取りは重かった。囚人がつけてそうな足枷をつけているかと思った。

足枷は重力に縛りているんだ。だから自由落下はなんの苦でもない。今まで抱えてきた友だった者に対する憎しみ、彼女への愛情。全ての重みから開放されるんだ。




ーーー〜ー



「しゅうと……。なんで飛び降りなんて……。」
彼女の思いだけは変わらなかったみたいだった。この行動はもう取り返せない。変わらない事実だった。