【時計の針が重なって】

時計の針が重なって、鐘の音がなる。
ゴーン、ゴーン……。
その低音は街に響き渡り、私を元の姿に変えていく。
せっかく魔法でお姫様にしてもらったのに。
そう思いながらも私は笑う。
階段にガラスの靴を置いてきたから。
きっと王子様は見つけてくれるはず。
ガラスの靴を履ける私のことを。
……それからどれだけ待っても王子様は来なかった。
当たり前だった。
だってガラスの靴もまた魔法でできているのだから。

【虹の架け橋🌈】

「やっと見つけたよ、虹の架け橋🌈」
彼からLINEが来た。
メッセージに写真付きで。
真っ白で何を撮りたいのかわからなかった。
相変わらずだな、と思った。
「元気でやってる？」
「ぼちぼちかな」
「そっか、寂しくない？」
「寂しいよ」
「私も」
そう言いながら空を見る。
虹が消えかけていた。
「今度会えるのはいつかな」
私のメッセージに既読はつかない。
彼はもういない。

【既読がつかないメッセージ】

「おーい」
「まえの車両にいるよ！」
「えっ、間に合わない感じ？」
「はやく」
「もしもーし」
「うんとかすんとか言って」
「し、」
「んじらんない」
「でかけるときは」
「いつもいっしょって言ったのに」
「るーるをまもらないやつは」

※既読がつかないメッセージ

【秋色】

気温の変化に秋色みっけ。
通学路の林に秋色みっけ。
焼き芋の中に秋色みっけ。
モンブランに秋色みっけ。
夏が長居しすぎたけど。
やっと秋が来てくれたね！

【もしも世界が終わるなら】

もしも世界が終わるなら。
美味しいものを食べるだろう。
もしも世界が終わるなら。
めちゃくちゃ豪遊するかもな。
もしも世界が終わるなら。
やってみたかったあれこれやって。
もしも世界が終わるなら。
結局最後は足掻くかも。
もしも世界が終わるなら。
もしも世界が終わるなら。
「ま、終わらないんだけどね」