【空白】
空白が嫌いだ。
テストの問題も絵の背景も。
空白があるだけで吐き気がする。
「気にしすぎだよ」
周りの奴らはみんなそう言う。
けれど、俺は知っている。
空白が人生を狂わせることを。
「学校を卒業してから二年の空白がありますが…」
「前の会社をお辞めになって今までの空白……」
同じような質問、困惑する人々。
何をしてたっていいじゃないか。
採用担当の俺はため息をつく。
けれど世間は許さない。
空白が嫌いだ。
いつか俺の人生にも。
侵食してきそうで。
【台風が過ぎ去って】
台風が過ぎ去って何もかもがなくなった。
家族も恋人も友達も。
ぜんぶ台風が飲み込んでいった。
涙は出なかった。
ただ心の中の憎しみだけは増大していった。
「呪ってやる」
自分の口から出たとは思えないほど低い声だった。
陰陽師どもに後悔させてやると思った。
我らを祓うために起こした台風よりも。
もっともっと大きな呪いの台風を。
今にも吹かせてやろうと決めた。
【ひとりきり】
ひとりきりにしてほしい。
彼女はそう言って部屋のドアを閉めた。
僕は仕方なく廊下に座る。
今日は休日なのに。
せっかく一緒にいられるのに。
そう思いながら、ただ黙っているしかなかった。
最近、彼女が冷たい。
この前のことを怒っているのかもしれない。
仕方がなかったのだ。
目の前にボールがあったからつい遊びたくなって。
彼女は僕に嫌気が差したのだろうか。
どう謝ればいいのだろうか。
ふいにドアが開いた。
彼女の手には真っ赤な毛糸のマフラーが見える。
それを僕の首に巻く。
「明日からお揃いのマフラーで散歩しよ」
彼女の言葉に、僕はワンッと答えた。
【Red, Green, Blue】
「レッド!」
「グリーン!」
「ブルー!」
「No! Red,Green,Blue」
いつまでやるのだろう。
もう一時間は経っている。
俺は心の中でため息をついた。
せっかく戦隊ヒーローの一員になれたのに。
かっこよく活躍して名を残したいのに。
どうして登場を何十回もやらなければならない?
レッドもレッドだ。
こんな怪獣の話なんて聞かなければいいのに。
だいたいこの怪獣もおかしいのだ。
辞書がモチーフだからってここまでしなくても。
いいかげん。
いいかげんにしてくれ。
「もうムリだ」
俺の口から出たかと思った。
グリーンは言うとその場から立ち去った。
レッドが何か言うが戻ってくることはない。
「くっくっくっ、作戦どおっぐ」
怪獣の不愉快な声に俺の拳が炸裂していた。
もうめんどい。
クビになってもいい。
ただしコイツだけは。
コイツだけは許せねぇんだ。
数分後、怪獣は巨大化することなく消えた。
俺は表彰され、ブルーからレッドに昇格した。
【フィルター】
フィルターを通せば大丈夫。
何も恐れることはない。
そう人々は言う。
本当にそうかなぁ、と思う。
フィルターにそこまでの力があるかなぁって。
巫女としてみんなを守らなきゃいけないのに。
みんなは私の意見を聞かない。
そして私の思ったとおりになって。
建物内は阿鼻叫喚になって。
だから言ったのに。
ゾンビにフィルターをかけたところで。
人間には戻らないって。
ま、いっか。
私には関係ないし。
それに。
そもそもこのゾンビは。
私が作っちゃったみたいなものだし。