【子供の頃の夢】
子供の頃の夢?
うーん、小説家かな。
あの頃は本ばかり読んでいたからね。
とはいえ、入賞すらできず。
すっかり大人になっちゃって。
……諦めるのは早いって?
人生百年時代だもんね。
でも期限を決めないと。
夢ばかり追ってられないから。
半年の間に成果が出なかったら。
もう書かないよ。
【どこにも行かないで】
お願い。
もう、どこにも行かないで。
あたしのそばにずっといて。
外は危険ばかりだけど。
ここにいれば安全だから。
なにも心配いらないよ。
だから。
「駄目だよ」
君は言う。
あたしと目が合う。
「幽霊は成仏しなきゃ」
君は言う。
だんだんと透けていく。
お願い。
お願いだから。
やっと君に会えたのに。
話だってできたのに。
幽霊だっていいじゃん。
あたしを置いていかないで。
【君の背中を追って】
君の背中を追って。
ここに立っている。
まだまだ初心者で。
右も左も前も後も。
わからないけれど。
大嫌いな君の隣に。
いつか並べるまで。
俺は描き続けるよ。
【好き、嫌い】
あなたのことが好き、嫌い。
可愛いけど、憎らしい。
抱きしめたいけど、叩きたい。
愛したいけど、殺したい。
愛情と憎悪は表裏一体。
あなたの視界に映るよう。
今日も精一杯生きなきゃ。
【雨の香り、涙の跡】
帰宅した娘は何も言わなかった。
ただ雨の香り、涙の跡だけがすべてを物語っていた。
「フラれちゃった……」
それだけ言うと泣き出した。
私は娘をぎゅっと抱きしめる。
「泣きたいだけ泣けばいい」
そう口にしながら私は笑っていた。
娘の彼氏は大きい女性が好きだった。
だから娘は体重を増やした。
四十kgを八十kgに。
私は見ていられなかった。
娘に何度も分かれるよう頼んだ。
けど、聞いてもらえなかった。
だから彼氏に嫌がらせを続けた。
ようやくその成果が実を結んだ。
「もっといい人を探しなさい」
体型より中身を見てくれる人を。