な子

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【雨の香り、涙の跡】

帰宅した娘は何も言わなかった。
ただ雨の香り、涙の跡だけがすべてを物語っていた。
「フラれちゃった……」
それだけ言うと泣き出した。
私は娘をぎゅっと抱きしめる。
「泣きたいだけ泣けばいい」
そう口にしながら私は笑っていた。
娘の彼氏は大きい女性が好きだった。
だから娘は体重を増やした。
四十kgを八十kgに。
私は見ていられなかった。
娘に何度も分かれるよう頼んだ。
けど、聞いてもらえなかった。
だから彼氏に嫌がらせを続けた。
ようやくその成果が実を結んだ。
「もっといい人を探しなさい」
体型より中身を見てくれる人を。

6/19/2025, 8:43:42 PM