【恋か、愛か、それとも】
ずっと前から好きだった。
幼稚園でも小学校でも中学校でも。
同じ高校を選んだのは君が好きだから。
私の学力ではギリギリだったけど、なんとか入れた。
おかげで追試常連ではあるけど。
今日こそは君に伝えようと決めていた。
恋か、愛か、それとも。
「え、お前のことは友達としか……」
友情か。
【約束だよ】
約束だよ。
テスト勉強してないって嘘つかないでね。
約束だよ。
マラソンで置いていかないでね。
約束だよ。
いつまでも一緒だよね。
だから、死んじゃった私に。
あなたも付いてきてね。
【傘の中の秘密】
「傘ささないの?」
「これくらいの雨ならいいかなー」
「そう?」
ボクの説明に納得したのか、彼は何も言わなかった。
それから通学路の分かれ道まで話しながら帰った。
担任がズラだったこと、昨日のクイズ番組のこと。
教室から逃げ出したあいつのこと。
「ばいばーい」
ボクが言うと彼も手を振った。
そのまま近くの空き地に向かう。
昨日の雨で雑草が濡れていて、数歩で進んで諦めた。
ボクは傘をさす。
ボトッとなにかの落ちる音がした。
傘の中の秘密。
教室で飼っていたカエルを潜ませた秘密。
一生を水槽の中だなんて、可哀想だから。
「長生きしろよ」
【雨上がり】
一年中降り続いた雨が止んだ。
植物は育たず、地上は水に覆われた。
今では川と海の境目もわからない。
それでも、人間は生きているだろうと思う。
だって、しぶといもの。
雨上がりの沈んだ街を。
人魚の私は優雅に泳ぐ。
【勝ち負けなんて】
勝ち負けなんて、どうでもよくない?
何回やってもあたしが勝つんだし。
なーんてね!
今回のはヤバかった!
って、急にどうしたの?
あたしの転校のこと?
べつに永遠の別れってわけじゃないんだし。
会おうと思えば……ってちょっと遠いな。
てか、あたし以外に負けるんじゃねーぞ!
そうしたら嫌でも会えるじゃん!
決勝で!
待ってるからな!
約束だぞ!