心のざわめき
大丈夫だから。
その言葉を信じるしかなかった。
心のざわめきを無視するしかなかった。
私は動かなかった。
その結果が、娘の自殺だったとしても。
「だから、決めたんです」
目と口を塞がれ、椅子に縛りつけられた人影に言う。
「止まることなく、動こうって」
私は動画の撮影ボタンを押す。
ピロン、と軽やかな音がした。
これから始まるのは解体ショー。
娘を殺された親の復讐という名の自己満足。
心のざわめきはいつの間にか消えていた。
だってもう、私には心なんて無いから。
終わり、また初まる、
物事には必ず終わりが来る。
仕事も、趣味も、人間関係も。
だって人間は永遠に生きられないから。
けれど、終わるだけじゃない。
終わり、また初まる、その繰り返し。
だから僕が君の前に現れるのもまた必然。
何度生まれ変わったって、逢いに行くよ。
「天性のストーカーってことですか?」
呆れ顔だって君なら美しいよ。
嗚呼
「嗚呼」
「父は話すことができません」
「嗚呼」
「なので僕を間に入れてください」
「嗚呼」
「父は言っています」
「嗚呼」
「息子である僕にすべてを渡すと」
言ってない、言ってない。
そんなことは言ってない。
息子は笑ってる。
俺を見て、笑ってる。
これは俺の人生だ。
お前のものじゃ……。
「僕の人生をめちゃくちゃにしたお返しだよ」
二人きりの病室で息子は笑った。
秘密の場所【ホラー注意】
あのね、あのね。
わたしの秘密の場所、
教えてあげる。
君のいちばん近くで、
考えてることもぜんぶわかって、
でも君には見つからなくて、
ふふふ、どこだろうね。
君のこと、なーんでもわかってる。
わたしのこと愛してるよね?
……あれ、愛してない?
いけない子だな。
君の脳内に埋め込んだのに。
わたしを、わたしの考えを埋め込んだのに。
愛してる愛してる愛してる。
さあ、今日も一日わたしのことだけを考えてね。
ラララ
「ラララ~」
声が聴こえる。
無邪気な子供とも、
落ち着いた女声とも、
怒りに満ちた男声とも、
例えようのない声が耳元で聴こえる。
耳を塞いでも、
大声で叫んでも、
聴こえる。
これは誰の声?
わからない。
わからないけど、
僕はその声から逃れたくて
走って走って、
気付けばビルの屋上から