まだLINEなんてなかった時代
よく親の携帯を借りて
君とメールをした事を思い出した
僕が生徒会長に立候補して落選した時
他の友人は頑張ったねと励ましてくれたのに
君は「暇が増えるからまた一緒に遊べて嬉しい」なんて
メールの下部に隠すように吐露していて
結局それが一番記憶に残っている
変わっていくのなら全て見ておきたい
居なくなるのなら居た事を知りたい
BUMP OF CHICKENのR.I.P.という曲の好きな歌詞
なんて君に相応しいんだろうか
どうしてこんなに寂しいんだろうか
時々ふと不思議に思う
どうして神様は僕達をこんなふうに
出会わせてくれたのだろうと
小学校帰りに急いで家に集まって
親に注意されるまでままごとで遊んだことも
中学校の頃一度だけ席が隣になって
授業なんてそっちのけで絵しりとりをした事も
高校からはバラバラだったけれど
合間を縫ってゲーム大会を開いたことも
大学の頃一度全てが嫌になった僕を
予定を蹴って家に泊まらせてくれたことも
今でもたまに話題にあがるそれらを
僕は一粒でも取りこぼしたくはない
今日のなんて事もない出来事でさえ
取りこぼさないように飾りつけてみる
同じものを見た時に
同じものを決まって連想するほど
僕らの思考はそっくりになって
けれど君は僕と違ってただ明るくて
前例のない突拍子もない行動をたまにしては
僕を翻弄させて笑わせる
こんなくだらない世界で
春の嵐みたいに突然僕の前に降ってきた君
他の誰にもとって変わりはしないから
どうか幸せでいてください
この道の先になにがあるの
同じ風景 同じ匂い
唯一信じた君は遠く遠くの空
寂しいと呟いてみたって
街の喧騒に消されておわり
「お前も母親に似るんだ」って
むかしに兄は言ったけれど
その言葉を思い出して時折泣くくらい
自分の中身に嫌気がさしてる
それを言ったあなたにでさえ
きっと似ている自分がこわい
とどのつまりみんなきらい
自分を含めてみんなこわい
この場所に留まる意味をぐらぐら
沸騰した頭の中の底で考えている
碌なこと考えられない理由は
最近の天気のせいにしてしまえ
窓越しに見えるのは
薄ぼんやりとした丸い月と
疲れ切った僕の顔
何も変わらないような日々の中で
目を凝らして些細に変わっていくものを拾い集めて
なんとなく運ばれていく
怖いくらいに先の見通せるこれからに
どうやって期待すればいいんだろう
どうやって愛せばいいんだろう
「この家は暖かい
何も脅威なんてない」なんて
言うのは簡単で
君が僕の母親を酷く嫌っている事実に安堵するような
確かな裏切りと冷たい内面を
僕はあと何度見過ごすのだろう
上手くやり過ごすのだろう
この場所で根を張るように
時間に比例して無分別に増える責任を
時折ぐしゃぐしゃにしてしまいたくなる
いい子になんてならなくて良かったのに
もう考えたくないから目を閉じるよ
まだ耳に残ってる君の声を
抱きしめて今日も眠るよ
さよなら おやすみ
1ヶ月なんてあっという間だと君は言う
僕はそれが寂しくて笑って誤魔化す
君と並んで見上げる花火は
どれほど綺麗で切ないんだろうと
想像している今がきっと一番幸せだ
こんなにくだらない、ぬるい生活の中でも
少しずつ周囲の人は変わっていって
いつの間にか夏至は終わっていて
茹だるような夏が来て
その後の形なんて
今は考えたくはないな
まだ考えたくはないな
君に会うまでに二重になりたいだとか
ちょっとは痩せておきたいだとか
身に余る熱で日々を浪費している
今がきっと一番幸せだ