エリア
俺は何かに変わっていく
それは決して憎悪じゃない
それだけははっきり分かるんだ
なぜかは知らないけどね
回転木馬に跨がっている
そんなことに何の意味があるのか
考え出したってきりがない
一体誰に祈っているのだろう?
一体誰がラジオをつけたのだろう?
一体誰にそそのかされたのだろう?
ここは俺の居場所じゃない
ここは俺の居るべき世界じゃない
ここは神聖な領域なのだから
お前は自分のことを出来損ないだと言った
それは決して諦めじゃない
それだけははっきり分かるんだ
なぜなのかは分からない
濁りきった貯水池の水面を見てる
そんなことに何の意味があるのか
考え出したって意味がない
一体誰に命令されたのだろう?
一体誰がお前をそうさせたのだろう?
一体誰のせいで俺はお前を好きになったのだろう?
ここはお前のための世界
ここはお前が生きるべき、理想郷
ここは神聖な領域なんだ
だから、俺は今夜にでもここから出ていく
お前のことはもう忘れることにした
全てを諦めた
全てを
全てを
持てるもの全てを手放したんだぜ
親愛なるフランシス兄さんへ
お久しぶり、兄さん。エニスです。このお手紙が届いている頃、こちらはつい先日家族のみんなであなたの無事とイエス様の生誕を祝ってクリスマス・パーティーを催しました。ニューヨークはもう一面銀世界のように真っ白なのよ。兄さんが戦っている欧州はどうかしら? 最近ラジオではどんどんドイツ軍が弱体化し、連合軍は東西でドイツを挟み撃ちにし始めたと聞きました。あの憎たらしいヒットラーの野望も御仕舞いでしょう。もしかしたらこの情報も古いかもしれませんね。
ご機嫌はいかがでしょうか、兄さん。あなたが無事に帰国できるよう家族みんなで日曜日は教会でお祈りしております。どうか御武運を。それと、このお手紙は父と母には内緒に書いています。兄さんは戦いでいっぱいいっぱいだから、このお手紙は本来は許されないものです。でも、私、本当に兄さんが心配で心配で、兄さんがもしかしたら苦しんでいるんじゃないかと思うと夜も眠れず泣いてばかりです。
どうか兄さん、死なないでください。一刻も早く戦争が終わることを祈ってます。そして何もかも忘れてあの懐かしいサンディエゴの海岸へドライブでもしましょう。それでは、さようなら。
エニス・J・ジェンタイルより
追伸
兄さんは以前お手紙で『僕の両手は血まみれで、もう二度と私の頭を撫でてやれない』とおっしゃいましたが、そんなことはありません。あなたは合衆国にとって、私たち家族にとって、勇ましく素晴らしい人です。どうかご自身を責めないでくださいね。愛しています。
無邪気な子供たち
心を病んだ人を理解できない奴らがいる。
理解しようとすらしない奴らもいる。
特に大人がそうだ。
だから、僕は子供が好きだ。
それも小さな子供。
まだまだ未成熟な子供。
だって彼らは僕を友達のように接してくれるから。
彼らの前では僕は心の底から笑顔になれるんだ。
大人たちの前では顔で笑って、背中で泣いてる。
そんなことしなくていいから、気が楽だ。
僕が病人だなんて、夢にも思わないだろう。
そして『変わった面白い人』だなんて言う。
本当に無邪気で元気な子供たち。
大人の女なんていらない。
僕はただ、僕を『面白い人』と認識してくれる子供たちとじゃれあっていたい。
フォールダウン、バット・ゲット・バクァップ
ズルして生きてたってしょうがない
例えトランクの中に大金が入ってたって
誰も振り向きもしない、そんな人生に
何の意味もないことくらい知ってるだろ?
空っぽの心を埋めてくれるのはお前なんだ
お前がいなければ、とっくに俺は引き金を引いてる
気にしないでくれ、俺は大丈夫だから
俺はもうすぐくたばるだろう
だけどじきに起き上がる
俺は地に這いつくばるだろう
でもゆっくりと立ち上がる
怖いもの見たさで世界の中身を見たんだ
たちまち後悔したよ、そこは便所より汚い所だ
でもお前はそんな場所でも綺麗に輝いている
いつまでもその光で照らしてくれるなら
俺は愚かにも笑って生きていけるだろう
お前は俺にとっての自由の女神なのだから
気にしないでくれ、俺は大丈夫だから
俺はもうすぐくたばるだろう
だけどじきに起き上がる
俺は地に這いつくばるだろう
でもゆっくりと立ち上がる
そうだ
これが俺の生き方なんだ
気にしないでくれ、俺は大丈夫だから
俺はもうすぐくたばるだろう
だけどじきに起き上がる
俺は地に這いつくばるだろう
でもゆっくりと立ち上がる
世界は転げ落ちていくだろう
だけど心配しないでいい
また元通りになるのだから
大丈夫さ
きっと大丈夫さ
エチゾラム0.5mgの人生
僕が生きていける理由は、この小さな、白い錠剤だけなんだ。
これがあるから、安心して生きていけるんだ。
こんなに小さいのに、何よりも心強い味方は君だけなんだ。
死ぬほど怖い思いをした。
死にたくなるほど辛い思いをした。
だけど、いつでも君が僕を救ってくれる。
救うのは神様じゃない。
白い小さな、僕の味方。