3/1/2023, 10:29:20 AM
欲望
私はあなたを渇望していた。
心の底から、あなたを求めていた。
多くの獣が群がるように、
様々な絵の具が混じり合うように、
あなたを想う感情が、
溶けて。
溶けて。
私の中に流れ込んできて。
疼いて。
息苦しくなって。
私は
2/28/2023, 12:12:48 PM
遠くの街へ
男のいた街はことごとく崩れていた。
廃墟と化したその街に男ひとり以外の人間は見当たらない。
無数の瓦礫。
干上がった水路。
むき出しの鉄骨。
灰色の空。
ノイズのような風の音。
男は人を求めて街を出た。
より遠くへ、灰色の世界を歩く。
線路の脇に携帯電話が落ちていた。
コール音が響いている。
男は電話を取り、耳元に寄せる。
賑やかな人々の声が聞こえる。
「そこに誰かいるのか」
男は返答を祈るように待っていた。
暫くして、反応があった。
「私はその街にいる。あなたを、皆はずっと待ってる。お願い、早く私を見つけて」
電話が途切れ、男は走り始めた。
2/28/2023, 3:29:30 AM
現実逃避
ドアを開けて外へ出ても、そこにいるのは私。
どんなに着飾ったって私は私。
何も変わらないし、目が覚めれば現実にうんざりするだけ。
生きてる間に逃げ道なんてない。
次から次へと苦痛の種は芽生えてくるばかり。
摘み取ればいい? キリがない。
だから私はナイフを手に入れた。
本の中にこっそり忍ばせておいたよ。
いつでも使える、魔法のナイフ。
奇跡が起きないなら、起こせばいいんだって。
そう気づいたんだ。