朝起きる。さっきまでいた君がいない。
朝ごはんはトースト。君は牛乳派。
おかしいな、どこにもいない。
身支度をする。君は髪をとく。
ずっと一緒にいたじゃん、どこいったんだよ。
玄関の戸をあける。やけに光が眩しい。
光に吸い込まれて溶けてしまいそう。
目を覚ます。見知らぬ天井。仕切られたカーテン。
部屋に響く機械音。独特な匂い。
「目が覚めたのね、!! ずっと眠ってたのよ?」
「やっと、目を覚ましたのか、!!」
久々に聞く両親の声でやっとわかった。
長い長い夢をみていたのだ。
最初から君はいなかった。
僕の長い長い夢の1部に過ぎなかったのだ。
ある日突然消えてしまった君。
せめて一言ちょうだいよ。
もう二度と会えないんならさ、
『君に会いたい』
押し入れを掃除していたら、
ふと懐かしい日記帳をみつけた。
「しにたい、生きるの疲れたよ。」
中学の頃書いた日記にはそんな事が書かれていた。
この時は少々うつっぽくて、ずっと死にたかったな。
「お疲れ様。生きていてくれてありがとう。」
しにたいと綴られたページにそっと書き残した。
今もまだ生きていたいほどの気力はないけど、
まだもう少しだけ生きてみる。
死ななかった中学の僕を裏切らないように。
『閉ざされた日記。』
小学生の頃は大好きだった教室。
今は苦手どころか大嫌いな場所。
昼休みの鐘がなる。
わっと重い空気が通り過ぎる。
ろうかに響く喧騒を横目に
唯一の居場所へ向かう。
ゆでたまごふたつと水筒。
グラウンドの喧騒。
教室の重たい空気。
上手く生きられない僕。
木枯らしが吹き飛ばしてくれたらいいのに。
また馬鹿なことを考える。
『木枯らし』
僕が死んでもね
海の波になって、風になって、
蝶になって、鳥になって。
絶対に貴方をみてるから大丈夫。
生まれ変わった僕をみて、
「きれい」って言ってほしいだけ。
今の僕じゃ叶わないから。
『美しい』
世界はきっと素晴らしい。
僕がそれに気づけなくなっただけ。
世界は僕が生まれる前からきっとなにも変わってない。
僕の考え方が変わっただけ。
毎晩頭痛がするほど泣いても
胸が抉られるほど苦しくても
刃を腕に突き立てても
きっと世界はなにひとつ変わっていない。
たとえ僕が死んでも
世界は変わらずずーっと同じまま。
なにひとつ変わらない素晴らしい世界。
僕が嫌いな素晴らしい世界で
貴方は「いつか、きっと」なんて信じてる。