鐘が鳴ると、厄災が起こる。
小さな村の住人たちは
その言い付けを、代々守り続ける。
幼い頃から刷り込まれた
鐘に近づいてはいけないの
鐘を鳴らしてはいけないの
皆んなが不幸になってしまうのよ。
誰もが、何故?という
疑問を抱かない。
きっと、命と引き換えになっても
誰も鐘に触れないのだろう。
そうして、恐れていた事が起こった。
村に疫病が流行り
慎ましく生活してきた村人に
薬なんて買える代物ではなかった。
ただひとつ、あの黄金色に輝く
鐘を売り払う以外には
生き延びる選択肢はなかったのだ。
そうして、村は村人ごと
滅びてしまった。
あの鐘だけを残して。
その鐘すら、どこの誰かが盗んでいった。
厄災は起きなかった。
ただただ、村人たちは自分の中に
巣食ったあの鐘の呪縛を
ふり払う事が出来なかったのだ。
【お題:鐘の音】
つまらないことでも
他にやることが無いなら
手を出してみたら、どうかな。
まだ、夏は続いて
暑過ぎて、やる気も気力も
何か考えるのですら面倒だけど。
やらなきゃいけないことを横目に
クーラーの効いたファミレスで
耳にも入ってこない雑談を
お金と時間とグラスの氷を溶かしながら
過ごすより。
もしかしたら、違う何かが
起こるかもしれない。
何もかもが有限な世界だからこそ
無駄になる時間は、きっと無い。
【お題:つまらないことでも】
鳥かごの中には
何が見える?
何羽かの鳥?
それとも、空っぽ?
自分自身や、愛する人?
閉じ込めるのも
閉じ込められるのも好きじゃない。
だから私は、出入り口も
常にあけておく。
気が向いたら、餌を食べに
来てもいいし。
羽根を休ませてる隙に
捕まえたりもしないよ。
いつだって、飛び立つ自由は
誰にでも平等にあるはず
それなのに、私は…
少々の不便は、不要な付属品として
人生という時間制限には付き物だ。
部屋に舞い落ちた、羽根を手に取り
ふっと吹くと
驚くほど軽やかに、また羽根は
空に戻った。
【お題鳥かご】
築いてきたと、思っていた 友情。
気持ちの厚みも
過ごした時間も
困っていたら、助けたい
悩んでいるなら、静かに見守りたい
かけたい言葉を
時には、グッとのみこんで
背中をさすった。
だけど、また、違ったんだね。
きっとこの沈黙は
そういう事なんだよね。
寂しくて、2回ほどノックは
してみたけれど。
ソコに居るのに、返事はない。
私が思うよりも
友情は、希薄で…脆いものなのかな。
静かに立ち去りながら
どうしてかなって…小さく寂しい
ため息がこぼれた。
【お題:友情】
私は、私だけという亡霊に
酷く取り憑かれていた。
最初は、砂時計のように
サラサラと溜まり込んだ不満や
吐き場所のない思いだった。
砂は湿り、重みを増して
私の苦しみは蓄積した。
そのうちに、心まで蝕まれた。
私が私を追い詰めた結果だった。
そうして、そのうちいつか
自分に向けていた刃を
他人に向けてしまうのではと
こわくなった。
自分を守ること
自分を大切にすること
それを、自分に許可してあげること
そうすることで、少しずつゆっくりと
砂は乾き、時間は再び動き出した。
けれど、あの苦しさは忘れない。
もう二度と囚われないためにも…
【お題:私だけ】