他人に、一切興味がないと
言い切る人が。
わたしを、仲間であり
家族と同じだと言った。
【家族】という、言葉に過敏で
拒否反応すら抱いてしまう わたしは
その言葉には
嫌悪感を、抱かなかった。
ただ、あの人なりの
優しい嘘かもしれないけれど。
わたしは、ただ素直に
ありがとう と伝えたのだ。
嬉しかったから。
【お題:.特別な夜】
この世界は、美しい。
残酷も不平等もそれ以外のものも
懐中に忍ばせて、幸せと悲しみ
愛や嘘 苦しみ、痛み、怒りもあるけれど
それでも 時が止まったような
瞬間に美しさが きらめく。
ふわりと
舞い落ちる雪のように
触れると、沁みる。
どれだけ 否定しても
この世界は、美しい。
【お題:この世界は】
幸せは、どこにあるんだろう。
私は私のことを
弱いなんて、決して思っていないのに。
積み重ねた努力は
砂の城のように脆かったのかな。
どうして。
ねぇ、どうして伝わらなかったの。
捧げた時間も、押した背中に
エールを送り続けたことも。
渡したあの日の手紙も。
どうして、私は
いま、こんなに悲しいんだろう。
ずっと、隣にいたのにね。
【お題:どうして】
いま、我が家には
一箱のみかんがある。
玄関の隅に置いて、早く食べなきゃ
ダメになっちゃうよなぁ
と、思いつつ。
ふと、箱をのぞくと少し減り
また、のぞくと半分ほどに。
子どもたちが、コタツでみかんを
している。
心配しなくても、大丈夫そうだね。
【お題:みかん】
この鐘の音が、幸せの福音なら
良かったのに。
赤くも黒くも見える
ただれた空と
悲鳴と、焼け落ちる何かと。
街を見守る時計塔は無惨に崩れ
鐘は、真っ逆さまに落ちた。
日常のシンボルが奪われ、潰され
初めて、現実を見る。
平和な日時は、あまりにも脆弱で
誰もが皆、明日も同じように
ベルが鳴ると信じて疑わない。
それが、普通だとしたら。
この光景は、夢なのだろうか。
いや違う。
私の街の鐘は、もう鳴らない。
【お題:ベル】