入念なイメージトレーニングも
心構えも、身だしなみも
簡単にひっくり返されるのは
分かっていても
けれど、この始まりのルーティンは
やめられない。
物事の始まりは、いつだって予測不能な
事態のお祭りだ。
だからこそ、気構えくらいは
立派な戦士でありたい。
始まりはいつも、そうやって
乗り越えてきた。
誰のせいにもしない。
私が、私の為にやるべきことだと
決めたのだから。
【お題:始まりはいつも】
すれ違いは
小さな、小さな…かけ違いの連鎖で
躓きもしない日常に
当たり前のようにあるコトだ。
触れ合うほどの、距離で
高速で行き交う電車のように。
向こう側に向かう沢山の人々など
誰も、知らない。
皆、窓の外を見ない。
スマホの中の呟きに魅入られている。
そこにも、興味や関心の意味などなく
…ふぅんと、すれ違いなのだ。
もちろん、私も。
【お題:すれ違い】
ポカポカと晴れそうな
秋晴れの日は、朝から忙しく
冷える朝の空気を感じながら
金木犀の香りがする道を抜け
ゴミ出しをする。
行きと帰りと、フワフワと漂う
よく育った大きな金木犀は
可愛らしい花を幾つも潜ませている。
髪を結い、エプロンをかけ
洗濯物を放り込みスイッチを入れ
次に干す、毛布をあれやこれやと
収納棚から吟味する。
3度目の洗濯が干し終わったところで
時計を見ると、昼までにはたっぷりと時間がある
少しだけ窓を開け
心地良い風と、柔らかな陽射しを
浴びながらゴロンと寝転がり
読みかけの本を…と、思ったが
あまりにも、心地良いので
今日は誘惑に負ける事にしようと
静かに目を閉じた。
【お題:秋晴れ】
あなたが発する言葉も
やわらかな光のように…
もう少し、あたたかければ良かった。
大切にしている
お皿だって、激しくどちらかが
ぶつかれば…あまりにも簡単に
呆気なく割れてしまうよ。
もう、何枚の割れた皿を
積み上げてきたんだろうね。
元に戻る事はないはずなのに
気持ちが麻痺して、今はまだ前を向けない。
その時が、来るまでは。
【お題:やわらかな光】
そんな目で、わたしを見ないで。
その目線はわたしを、困らせる。
動揺させる。追いやってゆく。
わたしにだけ
厳しい『私』が片時も離れず
わたしを、見張っている。
少しも優しくもなく
ただただ、悲しみに瞳を染めて。
その、鋭い眼差しが揺れて膨らんで
零れ落ちる時は
きっと、わたしも私も泣いている。
【お題:鋭い眼差し】